「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点

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ヴァージル・ホーキンス大阪大学大学院教授が指摘する日本の国際報道の問題とは?(写真:鈴木祐太)
グローバル化が一段と進んだ現在、海外のニュースも縦横に日本に届くようになり、日本人の国際理解も格段に増した……のだろうか? アメリカで起きた主な出来事はニュースで知っているだろう。イギリスやフランス、ドイツといった西欧での出来事も、少しは知っているかもしれない。では、アフリカの出来事は? 南米は?
私たちが普段見聞きしているニュースは、アメリカを中心とする一部の国に偏っている――。そうした構造をデータで検証する研究と活動を大阪大学大学院国際公共政策研究科のヴァージル・ホーキンス教授(47)が続けている。「ニッポンのすごい研究者」は今回、「報道されない世界」の解消に取り組むホーキンス教授を訪ねた。

最初は通訳になりたいと思っていた

――研究者になるまで、どんな道をたどってきたのでしょうか。

僕は「国」というものが嫌いだから、(出身国は)絶対に書かないで。出身地を問われたら、僕はいつも「無所属です」「赤ちゃんだったので覚えてないけど、病院で生まれたと聞いています」などと答えているんです。人間ファーストでいきたいんですね。

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高校のとき、歴史に興味を持ち、最初は通訳になりたいと思いました。

現代史の授業で冷戦を勉強し、夏休みの宿題が「新聞を切り抜いて冷戦に関するスクラップを作りなさい」だった。その記事の中で、ソ連のゴルバチョフとアメリカのブッシュが大笑いしている写真を見たんです。その両人の間に通訳が入っている。核兵器いっぱい持つこの2人を仲良く笑わせる通訳はすごいなあ、と。英語しかできなかったので、なにか外国語を学ばなければと思い、日本に来ました。

大阪大学大学院で、国際紛争や国連安保理の研究を手掛け、メディアの研究もやって博士号を取りました。研究者になる前は、特定非営利活動法人「AMDA」(本部・岡山)の職員でした。保健医療や貧困削減、開発系の仕事です。

カンボジアで約2年、ザンビアで約3年。いろんな世界を見ることができましたし、現場感覚を磨くことができましたが、壁も感じたんですね。

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