実は山形が最先端「ナスカの地上絵」研究の凄み AIも駆使して人や動物を描いた143点を新発見

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ペルーのナスカ台地にある「ハチドリ」の地上絵(写真提供:山形大学ナスカ研究所)
南米ペルーの「ナスカの地上絵」はどうやってつくられたのだろうか。誰がどんな目的で描いたのだろうか。世界中の古代史ファンらをひきつける地上絵。その謎に挑み続けている山形大学ナスカ研究所は、巨大な地上絵への立ち入り調査を世界で唯一認められている研究機関だ。その貢献がなければ、地上絵の謎は明らかになっていなかったかもしれない。「ニッポンのすごい研究者」第8回は、最新の技術と知見で謎に迫る山形大学人文社会科学部の坂井正人教授(58)に登場してもらった。

基礎研究が十分に行われていなかった

――坂井先生らの研究チームは昨年11月、人や動物をかたどった143点の地上絵を新たに発見と発表しました。人工知能(AI)を駆使して地上絵を見つける実験も手がけているそうですね。山形大学ナスカ研究所はどのような方法で地上絵の発見をしているのでしょうか。

今は技術が発達していますから、調査方法はずいぶん変わりました。1990年代は、ナスカ台地を歩いて調査するか、ペルー空軍が1940~70年代に撮影した解像度の低い写真を分析するしかなかったんですね。新たに撮影した場合、ナスカ台地全体の写真撮影と地図化にかかる費用は1億円。簡単に出せる金額ではありません。

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私が調査を始める1993年までに、動物の地上絵は40個ほどナスカ台地で発見されていました。皆さんが知っているような、ハチドリやクモやサルなどの巨大な地上絵が、ここに含まれます。

そのほかに、台形や三角形の幾何学図形の地上絵、それから放射状直線の地上絵などが知られていました。ただし、これらの地上絵の分布図が完成していませんでした。

ナスカ台地は広大でおよそ20キロ×15キロもあります。現地調査をするためには、地上絵の分布図は不可欠です。しかし、地上絵の分布に関する基礎的な研究が十分に行われていなかったのです。

そこで自分で調査して、どこにどんな絵があるのかを把握したい、と。つまり、山形大学ナスカ研究所が調査に乗り出す前まで、ナスカの基礎的な研究は進んでおらず、データも意外とそろっていませんでした。そろっていなかったというか、あまりにも大変な作業なので、誰も手をつけることができなかったんですね。

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