――坂井先生はそもそも、なぜ研究者を志したのでしょうか。
父が薬学の先生だったことが大きいかもしれません。アルカロイドを含む植物を対象にした研究をして、台湾、タイ、エジプトとか、よく外国に行っていました。私が子どものころは、薬草を採りに国内の野山へ連れて行ってもらったんですよ。父に「これと同じ植物を見つけろ」と言われて。見つけて褒めてもらうのが、うれしかったですね。
父が何の研究をしているか当時はわかりませんでしたが、「学問とは体を使ってデータを集めること」という姿勢を肌身で学びました。これが研究者になる道を選んだ大きな経験でしたね。
研究は、仮説を持って文献を調べ、現地で情報を手に入れる。現地で情報が得られなかったら、新しいフィールドを探す。文献で終わるのではなく、体を使って手に入れたデータは魅力的です。「頑張って手に入れた感」があります。しかもこれが仕事になるんです。
「本当に面白い」と思うことを研究する
――研究の道を志す若い世代には、どんな言葉をかけますか。
「好きなことをやれ」ですね。面白さは、人それぞれに異なります。私は「これが面白い」と思ってナスカの地上絵に関する研究をやっています。けれども、みんながナスカの地上絵を面白いと思うわけではない。
それそれの人が「本当に面白い」と思うことをテーマに選び、研究することで、基本的な研究方法などを身につけていけば、自分の確固たる血肉になります。好きなテーマ、好きなフィールドをみつけ、自分にしかできない研究に取り組むべきでしょう。
誰も持っていない新しいデータを発見し、これまでの知見を覆していく。それが研究者として一番の魅力ではないでしょうか。
ナスカの地上絵の研究には、フィールドワークの魅力があります。南米のペルーに山形大学ナスカ研究所ができて、毎年のように現地へ行くことができる。これまでとはまったく異なる世界に入り込むため、自分の生活スタイルも変えて、研究に昼夜没頭している。つまり生活スタイル自体も研究の魅力なのかな、と。
ナスカの地上絵は、同じ絵がありません。一品ものです。それぞれの地上絵が描かれた意図を探るため、まだまだやることが残されているんです。
取材:板垣聡旨=フロントラインプレス(Frontline Press)所属
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