実は山形が最先端「ナスカの地上絵」研究の凄み AIも駆使して人や動物を描いた143点を新発見

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――坂井先生はそもそも、なぜ研究者を志したのでしょうか。

父が薬学の先生だったことが大きいかもしれません。アルカロイドを含む植物を対象にした研究をして、台湾、タイ、エジプトとか、よく外国に行っていました。私が子どものころは、薬草を採りに国内の野山へ連れて行ってもらったんですよ。父に「これと同じ植物を見つけろ」と言われて。見つけて褒めてもらうのが、うれしかったですね。

父が何の研究をしているか当時はわかりませんでしたが、「学問とは体を使ってデータを集めること」という姿勢を肌身で学びました。これが研究者になる道を選んだ大きな経験でしたね。

研究は、仮説を持って文献を調べ、現地で情報を手に入れる。現地で情報が得られなかったら、新しいフィールドを探す。文献で終わるのではなく、体を使って手に入れたデータは魅力的です。「頑張って手に入れた感」があります。しかもこれが仕事になるんです。

「本当に面白い」と思うことを研究する

――研究の道を志す若い世代には、どんな言葉をかけますか。

ペルーにある山形大学ナスカ研究所。開所は2012年。「私が大学院生のころ、地上絵の予備調査を実施しました。その後、1996年に山形大学へ就職。心理学・情報科学・地理学の先生に相談し、共同研究を始めました。2004年から現在に至るまで、歴代の学長がこの共同研究を重点的に支援してくださっています。また同僚の教員や事務職員といった山形大学の仲間たちのおかげで、ナスカ研究は大きく育っています」と坂井教授は言う(写真提供:山形大学ナスカ研究所)

「好きなことをやれ」ですね。面白さは、人それぞれに異なります。私は「これが面白い」と思ってナスカの地上絵に関する研究をやっています。けれども、みんながナスカの地上絵を面白いと思うわけではない。

それそれの人が「本当に面白い」と思うことをテーマに選び、研究することで、基本的な研究方法などを身につけていけば、自分の確固たる血肉になります。好きなテーマ、好きなフィールドをみつけ、自分にしかできない研究に取り組むべきでしょう。

誰も持っていない新しいデータを発見し、これまでの知見を覆していく。それが研究者として一番の魅力ではないでしょうか。

ナスカの地上絵の研究には、フィールドワークの魅力があります。南米のペルーに山形大学ナスカ研究所ができて、毎年のように現地へ行くことができる。これまでとはまったく異なる世界に入り込むため、自分の生活スタイルも変えて、研究に昼夜没頭している。つまり生活スタイル自体も研究の魅力なのかな、と。

ナスカの地上絵は、同じ絵がありません。一品ものです。それぞれの地上絵が描かれた意図を探るため、まだまだやることが残されているんです。

取材:板垣聡旨=フロントラインプレス(Frontline Press)所属

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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