その後、人工衛星から撮影された地表の写真が手に入るようになりました。最初、分解度は60センチくらいでしたね。ナスカ台地は約300平方キロの広さがあるので、分析作業は膨大です。
私だけではできないので学生さんたちに声をかけました。私の研究室にコンピューターを並べ、休み時間に来てくれた学生さんたちに、人工衛星画像の中から動物や直線などの地上絵を抜き出す作業をしてもらいました。それだけで5年くらいかかりました。
この地上絵が最近つくられたものなのか、それとも古いモノなのかは、上から撮影した写真だけではわかりません。現場での調査が不可欠です。地上絵の細部を検討して、ほかの地上絵と比較する必要があります。
また地上絵の付近に、当時の土器が残っているのかについても調査しなければなりません。こうした調査を通じて、地上絵がつくられた年代や目的を研究していくわけです。
日本IBMと協力してAIによる実証実験を実施
――現在では、地上絵発見にどんな方法を採用しているのでしょうか。
最近は航空機を使用したレーザー測量やドローンも使います。日本IBMと協力して、AIによる地上絵発見の実証実験を行いました。この実験では、高解像度で撮影した上空からの写真をAIに分析させ、その後に現地を調査しました。
先ほど、人工衛星画像の解像度は60センチくらいだと言いましたが、IBMとの研究で使った航空写真の解像度は約15センチです。この写真から地上絵を抜き出す作業を人間が行った場合、ナスカ台地全体をカバーするのに10年以上かかるでしょう。
AIを使ったこの研究では、AIに既知の地上絵に関するデータを学習させ、それに基づいて航空写真から地上絵の候補を抽出させました。候補の中にはすでに知られている絵も出くるので、「人工知能はちゃんと絵を認識できているんだな」と判断できます。もちろん、地上絵以外のものも候補として挙げるので、現地調査での確認が不可欠です。
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