実は山形が最先端「ナスカの地上絵」研究の凄み AIも駆使して人や動物を描いた143点を新発見

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その後、人工衛星から撮影された地表の写真が手に入るようになりました。最初、分解度は60センチくらいでしたね。ナスカ台地は約300平方キロの広さがあるので、分析作業は膨大です。

坂井正人(さかい・まさと)/山形大学学術研究院教授。専門は文化人類学、アンデス考古学。1963年千葉市生まれ。1996年東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。同年山形大学人文学部助教授、2009年山形大学人文学部教授。2013年山形大学ナスカ研究所副所長。著書・編著にReyes, Estrellas y Cerros en Chimor. (Editorial Horizonte)、 『ナスカ地上絵の新展開』(山形大学出版会)、『ラテンアメリカ』(朝倉書店)、『古代アメリカの比較文明論』(京都大学学術出版会)(写真:本人提供)

私だけではできないので学生さんたちに声をかけました。私の研究室にコンピューターを並べ、休み時間に来てくれた学生さんたちに、人工衛星画像の中から動物や直線などの地上絵を抜き出す作業をしてもらいました。それだけで5年くらいかかりました。

この地上絵が最近つくられたものなのか、それとも古いモノなのかは、上から撮影した写真だけではわかりません。現場での調査が不可欠です。地上絵の細部を検討して、ほかの地上絵と比較する必要があります。

また地上絵の付近に、当時の土器が残っているのかについても調査しなければなりません。こうした調査を通じて、地上絵がつくられた年代や目的を研究していくわけです。

日本IBMと協力してAIによる実証実験を実施

――現在では、地上絵発見にどんな方法を採用しているのでしょうか。

最近は航空機を使用したレーザー測量やドローンも使います。日本IBMと協力して、AIによる地上絵発見の実証実験を行いました。この実験では、高解像度で撮影した上空からの写真をAIに分析させ、その後に現地を調査しました。

先ほど、人工衛星画像の解像度は60センチくらいだと言いましたが、IBMとの研究で使った航空写真の解像度は約15センチです。この写真から地上絵を抜き出す作業を人間が行った場合、ナスカ台地全体をカバーするのに10年以上かかるでしょう。

AIを使ったこの研究では、AIに既知の地上絵に関するデータを学習させ、それに基づいて航空写真から地上絵の候補を抽出させました。候補の中にはすでに知られている絵も出くるので、「人工知能はちゃんと絵を認識できているんだな」と判断できます。もちろん、地上絵以外のものも候補として挙げるので、現地調査での確認が不可欠です。

ナスカ台地で現地調査をしている様子(写真提供:山形大学ナスカ研究所)
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