「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点

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そのほかにも問題点はあります。まず低所得国と高所得国の間で生じている価値観の差。これは非常に大きい。要するに、貧困国であればあるほど、報道されません。これは鉄則です。

データを分析すると、報道されるかどうかの分かれ目はまだある。人種的な問題もその1つでしょう。まずは日本人かどうか、その次は白人かどうか。この差は本当に大きい。肌の色だけではありません。黒人であっても、アメリカに住んでいる黒人はまだ注目されます。だから、ブラック・ライブズ・マター運動は日本でも注目されました。

では、アフリカの黒人は? コンゴ民主共和国の紛争がそうだったように、アフリカでは多くの黒人が亡くなっても注目されません。

日本で報道された2016年の「国別報道量」。全国紙3紙の文字数をもとにGNVが作成した。水色が濃い国ほど報道量が多い。ブラジルに色が付いているのは、この年に開かれたリオデジャネイロ五輪の影響と思われる(出所:GNVのホームページ)

国内の報道ですら、存在が脅かされている

G7を構成する日本のような国で、国際報道の少なさは世界のためにならず、回り回って日本のためにもならない、とホーキンス教授は強調する。地理的な状況から、国際報道にある程度の偏りが生じることは当然としても、「日本人か日本人以外か」「先進国か後進国か」といった程度の判断でニュースが選択されているとしたら、日本の国際化などまったくおぼつかない。

――この現状をどう変えたらいいでしょうか。方法は見えていますか。

すごく難しい質問です。そして今後はますます、解決が難しくなっていくでしょう。残念ながら、この場での具体的な提言は無理ですね。報道のビジネスモデル自体が崩れているからです。

同時に若者のニュース離れです。SNSが発達する以前から、ネットの世界では「ニュースはタダで見るものだ」という考えが社会に定着してしまい、報道のビジネスモデルは崩れていきました。国際報道どころか、普通の真面目な国内のストレートニュースですら消えていっているじゃないですか。日本の真面目な政治的な報道でさえ、存在が脅かされているじゃないですか。

そんな状態では、国際報道どころではないでしょう。そして、そうした環境下でグローバル化に拍車がかかっているわけです。国際ニュースの量的な乏しさ、質的・地理的な偏りは、本当はますます日本の重要課題になっているはずなんですが・……。

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