「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志

データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点

日本の国際報道では、いったい、どんな偏りが生じているのか。報道されない世界とは、どのようなものなのか。それを検証するために、ホーキンス教授は「伝わっていない世界」の情報を分析し、伝えるメディア・プロジェクト「グローバル・ニュース・ビュー(Global News View:GNV)」を立ち上げた。2016年のことである。プロジェクトには、研究室の学生や大学院生らが多数関わっている。
GNVでは、読売、朝日、毎日の3紙(いずれも東京本社版の朝刊)やデータベースを材料としてほぼすべての国際ニュースをピックアップする。トピックごとに分類したり、記事の分量や扱いを細かに調べたり。報道の内容についても「ネガティブ」「ポジティブ」「中立」という3つの指標で色分けする。そうしたデータをもとにして、報道された地域、その量や傾向を分析し、国際報道の現状を浮き彫りにする試みだ。
その結果、逆に「報道されていない地域」が浮き彫りになる。日本にニュースが届かない国々では、実際にどんなニュースが流れているのか。GNVはそうした報道についても現地のニュースサイトをチェックするほか、英語資料も分析。その国について英語で書かれたものをピックアップして学生に送り、それを学生がわかりやすい形に変えて公表している。

――GNVでの活動や研究を通して、ホーキンス先生は「日本の国際報道には2つの問題点がある」と主張しています。具体的には、どういうことなのでしょうか。

量が乏しすぎる。そして、中身が偏りすぎている。この2点です。もちろん、外国の国際報道にも同様の傾向はあります。測り方の問題があるので簡単に比較はできないですが、アメリカのテレビ報道では国際ニュースが15~20%くらいです。日本の新聞は、ニュース全体の10%前後ですね。

これとは別に、以前、私が手掛けた調査では、欧米の国際報道でアフリカのニュースが占める割合は6~9%でした。これに対し、日本の新聞では2~3%です。

日本の国際報道は量が乏しく、そのうえで地域的な偏りが激しい。とはいえ。欧米の国際報道も決してモデルにすべきようなものではありません。

ナショナリズムと自国中心主義の影響が大きい

日本の国際報道が偏りすぎている原因については、ナショナリズムと自国中心主義の影響が大きいと言えます。例えば、事故やテロがあれば、日本のメディアは「被害者に日本人がいるか」「その出来事と日本人にはどんな関わりがあるのか」といった点にばかり、まず目を向けます。

その次に来るのは、欧米メディアの目線です。日本の国際報道は、欧米メディアの報道を追いかけている。したがって、アメリカが着目するニュースに日本も着目します。アフリカの出来事を報道するにしても、しばしば、ニューヨークやワシントンから「アフリカのこの問題について、アメリカ当局はこういう見解を示している」といった伝え方をしています。

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