「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点

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――GNVの成果と課題について教えてください。

どうやって、少しでも多くの人に見てもらうか。それが大きな課題ですね。もう1つは、複雑さを大切にしていく、ということです。シンプルに、わかりやすく、ひと言で何かを言い表せば、「なるほど」と思う人はいるでしょう。池上彰さんのように。

しかし、国際社会で起きている出来事は、そんなに単純ではありません。GNVの編集原則の1つは「複雑さを犠牲にせずに分かりやすく書く」ということです。難しさや複雑さを犠牲にしたら意味がありません。それどころか、事実と違うものが認識されてしまう可能性があります。

GNVのニュースサイトで扱う記事は、人に知られていないものです。すでに知られているニュースは取り上げません。だから、アメリカなどに関する記事は書きません。中国や朝鮮半島に関する記事も出ていません。

その代わり、日本ではまったく知られていないニュースを出します。例えば、エチオピアでは2018年4月に政権交代があり、アビー首相が就任しました。アビー政権は国内で政治犯釈放などを断行して大改革を進める一方、隣国のエリトリアと和平合意も結んだ。それについて、GNVは2018年9月に記事を出しました。

GNVが不要になるのがいちばんいい

私たちは毎年、「潜んだ世界の重大ニューストップ10」というのも作っているんですね。注目されていないけど、これこそが大事だというニュース。エチオピアの政権交代はその意味で大ニュースでした。

実際、アビー首相は1年後にノーベル平和賞を取り、日本でもようやくエチオピアの改革に目が向きました。アゼルバイジャンとアルメニアの紛争もそう。昨年、紛争が再発しましたが、その3年前の時点でGNVは両国の緊張が増していることを伝えました

今は必要とは思えなくても、いつか必要になる。そういうニュースは必ずあります。だから、ニュースの空白をつくらず、報道されないことを報道することが重要になってくる。メディアの偏りを解消することは、すごく難しい。

本当は、GNVが不要になるのがいちばんいい。要するに、読売新聞とか、朝日新聞とか、NHKとか、大メディアがきちんと、本当の意味での世界を報道すればいいわけです。われわれの仕事は、それまでの穴埋めです

取材:鈴木祐太=フロントラインプレス(FrontlinePress)所属

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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