アフリカ・タンザニアの零細商人を研究
――文化人類学といえば、辺境の狩猟採集民や牧畜民を研究するイメージがあります。これに対し、小川先生の研究はタンザニアの「都市部」を対象にしています。しかも、零細商人。なぜ、そこに着目を?
(村社会などの)安定的なコミュニティーや濃密な人間関係はもともとあまり得意じゃなくて、わいわいガヤガヤした市場や路上が好きなんですね。「働く」「交換する」「贈与する」といった、経済人類学の領域にも昔から興味がありました。
京都大学大学院時代の指導教員が社会経済学者で、タンザニアの農村経済を研究していたんです。だから「(タンザニアの)農村に行け」とずっと言われていたのですが、言うことを聞かずに都市をフィールドにしたんです。
当時はダウ船(アラビア商人が使っていた大型の木造帆船)に乗りたい、キャラバン交易をしたい、ニジェール川を下りたいとか、そんな無謀なことを言っては却下され……。
なんとか指導教員を説得できたテーマが「零細製造業者の徒弟制度」でした。親分子分みたいな関係性の研究も面白いかな、と。指導教員も「このテーマだったらいい」と言ってくれました。
まず、タンザニアに行って、家具職人に弟子入りしたんですね。だけど、ほんの数週間でフィールドを変えちゃいました。零細商人のほうが断然面白かった。指導教員には「零細商人はこのウソで(相手を)騙すことが、こんな意味を持っていて」などと一生懸命説明しました。楽しそうに研究していることは伝わったようで、厳しくも温かく見守ってもらいました。
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