京大教授の看護師が挑む「がん緩和ケアの究極」 心の領域にも踏み込んで、痛みを和らげる

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がん看護専門看護師の草分けである田村恵子氏が研究していることとは?(写真:益田美樹)
がんになっても長期にわたって生活を続けられる人が増え、そのケアや支援が課題になってきた。京都大学大学院医学研究科教授で「緩和ケア」を専門とする田村恵子氏は、日本の「がん看護専門看護師」の草分けでもある。今はスピリチュアルケアという心の領域に踏み込んだケアの実践、研究を続けている。
夢の実現や社会の改革に向けて地道な努力を重ねる研究者たちを紹介する「ニッポンのすごい研究者」。5回目は田村氏の目下の研究について聞いた。

患者のさまざまな「痛み」を和らげる

――「緩和ケア」とはどんな分野、内容でしょうか。言葉そのものは耳にする機会も増えてきたように思いますが。

病気で身体の苦痛が生じたり、こういうふうになったのはどうしてだろうと落ち込んだり。人には普通にあることですね? そうしたさまざまな「痛み」を和らげていくのが緩和ケアの一番大きな目的です。日本では、がんの領域で発展してきました。

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がんは、診断されたときから緩和ケアが始まります。治療と並行して緩和ケアを行うわけですね。特に2006年にがん対策基本法ができてからはそうなりました。基本法以前は、緩和ケアには「終末期看護(ターミナルケア)」の意味合いが強かった。

今は違います。がんと過ごすすべての日々で生じるさまざまな苦痛を緩和していくこと、それにより、患者のQOL(Quality of Life、生活の質)をより良くしていくとことが大きな目標です。もちろん、ターミナルケアの役割も含みながら、ですが。

――スピリチュアルケアへの関心をいつから持っていたのでしょう?

1995年ごろから、スピリチュアルケアを研究しています。当時はホスピスで働いていました。日本にはまだ2カ所ぐらいしかない時代です。その間、英国に短期間勉強に行く機会があり、現地で看護師さんたちが自律性をもってケアしている姿を見た。それがきっかけですね。

臨床の場で働いていると、患者さんたちの声を聞くわけです。「悪いことなんてしてないのにどうしてこんな病気になったんだろう」とか、「家族に迷惑をかけるだけだから早く終わりにしたい」とか。日常茶飯事です。

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