京大教授の看護師が挑む「がん緩和ケアの究極」 心の領域にも踏み込んで、痛みを和らげる

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――がんを体験した人や医療者などが集い、支え合いながら対話する「ともいき京都」。その代表も務めています。今後はどんな研究や活動を?

がんサバイバーシップの支援に関しての研究を手掛けたいですね。がんが慢性疾患になり、がんになっても病気と共に生き続けられる人が増えたという意味ではいいことだと思うんですが、慢性になればなるほどサポートが必要です。そのサポートがまだ全然充実していない。

サバイバーシップ支援は、がん看護の分野でも非常に遅れています。サバイバーの人たちは、入院中と違ってさまざまな影響を受けて生活しているのでデータも取りにくい。彼らを対象にした研究は非常に難しいんです。

ただ幸いなことに、「ともいき京都」の活動を続けさせていただいているので、そこをベースに研究したいと思っています。

がんサバイバーがともに支え合う基盤を形に

サバイバーの人たちの力をどうやったら引き出すことができるのか。引き出した後の力をサバイバー自身がどんなふうに活用できるのか。そうしたことを可能にするプログラムを作りたい。支え合う基盤の要素を研究によって形にできたらと思っています。

「ともいき京都」の活動風景。設立から今年で5年になる(提供:ともいき京都)

これは私の造語ですけれども、「ケアリング・コミュニティ(共にケアし合うコミュニティ)」。京都では「ともいき京都」の活動がそれに該当すると思いますが、社会全体にこの枠組みを広げるためには、何か必要な要素があるはず。そこを研究で見極めたいと考えています。

現代では、高齢化に伴うさまざまな問題が横たわっています。ケアリング・コミュニティは、そういった中で社会全体を作る基盤になるのではないでしょうか。

本来、日本社会に存在していた「支え合い」の意味を問い、再構築していく。以前と同じ形ではなくても構わないと思います。「ともいき東京」とか、「ともいき横浜」とか。他の地域でもケアリング・コミュニティをつくっていけるよう、必須の要素を見つけて提案できたら、と思います。

取材:益田美樹=フロントラインプレス(Frontline Press)所属

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