立命館の文化人類学者「研究は何でもOK」の驚異

アフリカでは古着商にもなる大胆な調査を実践

――タンザニアでは自身が古着の商売を行っています。しかも仲卸商として約500人の小売商を抱えていた、と。第三者的ではないですよね?

そうですね。私は、彼らの生きている方法を真似ながら現地に入っていきます。だけど、どうしても越えられない壁にぶち当たる。研究者の誰もがそうだと思います。

現地に住む彼らにとっては当たり前でも、私からすると不思議なこともいっぱいあります。フィールドには常に「自文化」と「異文化」を行き来しながら入っていくものです。

――フィールドワークでは、ノートを使うんですね?

たくさんの思いがぶちまけられている「煩悩ノート」(写真:末澤寧史)

2つのノートがあって、1つは研究データとか、その日に聞いたことを書くデータノート。もう1つは、その時々の思ったことをぶちまける「煩悩ノート」です。

イライラしたこと、疑問に思ったこと、研究の途中で思いついたアイデアなどは、煩悩ノートになんでも書いちゃいます。

(煩悩ノートを)見せてもらえないか? いや、あの人が好きとか、嫌いとか、個人的な思いもいっぱい入っていまして……。終活する際には絶対に処分したい代物です。

バラバラに取ったデータがふとつながる

――研究データはどのように集めるのでしょうか。

やっていることは平凡です。まずは商人の資本規模とか、ビジネスの困難だとか、出来事とかを聞いて、大量にデータを集めます。友だちは誰か、どんな取引関係があるのか、露店の大きさはどのくらいか、1日どのくらい歩くのか、どんな食事を取るのか。

論文には使わないデータを膨大に取っています。でも、バラバラに取ったデータがある時、ふとつながったり、矛盾をきたしたりするんです。そのときにこそ、「ここに何か発見があるぞ」と。

商人に商談での発言の意図を聞くと、「それがウジャンジャ(狡知)だ」と返答がある。私は「どういうこと?」と疑問を持つ。腑に落ちないと感じたら、その原因を探る、違うデータを取りに行く、しつこく食い下がって聞く。答えてくれるまで待つ。その繰り返しですね。

(研究期間中は現地の人たちと)ずっと一緒に暮らしているので、いつかは答えてくれるタイミングが訪れるんです。飲みに行って酔っ払ったときに、本音を聞き出すこともあります。

仮説はあまり立てません。先行研究の理論から仮説を紡ぐことは有効ですが、フィールドワークに行く前に自分が思いつく仮説なんて誰でも思いつくものだったと後から思います。

現地で見聞きしたり、データを突き合わせたりする中で、疑問に思ったことを深く掘っていく。そのほうが好きですね。

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