立命館の文化人類学者「研究は何でもOK」の驚異

アフリカでは古着商にもなる大胆な調査を実践

――その時の研究成果は『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』になりました。ありがちな「貧しいアフリカ像」とは異なり、騙し騙されながらも支え合う商人たちの“したたかな知恵”を体系化した研究はユニークで、サントリー学芸賞も受賞しています。

おがわ・さやか 立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。1978年愛知県生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程指導認定退学。博士(地域研究)。日本学術振興会特別研究員、国立民族学博物館研究戦略センター機関研究員、同センター助教、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授を経て現職(写真:末澤寧史)

 

オーソドックスなことをやっているつもりなんです。

狩猟採集民とか、牧畜民の生業研究と同じように、都会の零細商人の生業を研究すれば、商売が対象になりますよね。

調査をしていた2000年代前半、アフリカの都市経済は約7割がインフォーマルエコノミー(露天商や行商など公的に把握されない経済活動)であり、そのうちの約半分が零細商人によるものでした。

自分が研究している社会、つまりタンザニアで主流の経済を選んだら、それが零細商人だったというわけです。

調査はほとんど24時間ストーキング

――そもそもの話ですが、文化人類学のフィールドワークとはどのようなものですか。

文化人類学の調査の看板は「参与観察」です。現地の人と一緒に住み、言語を覚え、人間関係をつくり、その社会に入っていくイメージです。

――例えば、どんなことを?

ほとんど24時間のストーキングですよ。路上商人の研究をしていたときは、毎朝商人たちが迎えに来てくれ、一緒に仕入れに行き、路上で一緒に商売し、ご飯を食べて、夜になると帰ってくる。儲かった日は仲間と飲みに行き、ついでにライフヒストリーを聞く。

大学院生の時、私はいつもストリートファッションでした。タイトな黒のロングスカートに、タンクトップやキャップなど、ヒップホップ歌手のような格好で歩いていた。

フィールドワークの方法は、研究者によって全然違います。農村研究がテーマであっても、近くの小都市にホテルを借り、インフォーマント(資料や情報などの提供者)が車で迎えにきて、車で各世帯を回ってインタビューをする。そんな研究者もいます。ただ、若い研究者は現地にどっぷり入り込むことが多いのではないでしょうか。

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