立命館の文化人類学者「研究は何でもOK」の驚異 アフリカでは古着商にもなる大胆な調査を実践

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(香港に住むタンザニア人の中古車ブローカーをテーマにした)『チョンキンマンションのボスは知っている』の研究も、最初はコピー商品や模造品という「海賊商品」に関心があったんです。

でも掘り下げに限界があった。コピー商品は中国本土が主。しかも2000年代後半からは海賊版の携帯電話が一掃されました。それに、タンザニアの人たちは商品がコピーかどうかなんて、あまり深く考えていなかったんですね。

それよりも、出会った中古車業者が普段行っている、インターネットなどを駆使した商習慣のほうがずっと面白くて。最初に立てた計画よりも現場で発見したことのほうがずっと面白い。そう思えると、うまくいきます。

『チョンキンマンションのボスは知っている』の基になったフィールドワーク中の一コマ。右から5人目が小川氏(本人提供)

何かにつけて「知りたい」と言い続ける

――フィールドワークを続けていると、新しい切り口も見つかる?

そうですね。例えば、タンザニア商人たちは、携帯電話の電子マネー口座を利用したインフォーマルな海外送金システムを使っています。

携帯電話の電子マネー口座を利用したインフォーマルな海外送金システムを聞き出したときのメモ(写真:末澤寧史)

その発見は、商人たちとの雑談がきっかけでした。ある時、私は(世界最大手の国際送金サービスの)ウエスタンユニオンを使ってタンザニアに送金したんですね。いつも調査を手伝ってもらっている調査助手の子どもに学費を援助するためです。

で、何気なく、「君たちもウエスタンユニオンを使う?」と尋ねたら、助手は「使うけど、手数料が高いよね。今は使っていない人が多いんじゃないかな」と。

「じゃあ、どうやって送金するの?」

「いつも黒い鞄を持って歩いているやつがいるだろ。君と仲良しの。あいつが実はエージェントなんだよ」

「えっ、そうなの!」

そういう感じです。そして、黒い鞄の彼に会ったときに、飲みに誘って話を聞いて。もちろん、すぐには教えてくれません。

「そのうちまた送金するから、そのときに来な」と言われるけど、そのときになると忘れられている。だから、知りたいことは、何かにつけて「知りたい、知りたい」と言い続けます。

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