
坂戸営業所の定例会議
坂戸(さかど)営業所、定例会議の日が訪れた。定例会議は毎月二十五日の午後六時から、営業所の職員全員参加で行なわれる。
二階会議室に、太一を含めた職員九名が着席して、議長の西野はホワイトボードの前に立つ。
平素は口汚く罵る西野だが、会議では畏まった口調で喋(しゃべ)る。本社へ議事録を提出する必要があるからだ。
「私はこの坂戸という街に可能性を感じている。都心までは東武東上線急行でおよそ四十五分、それでいて家賃は手ごろ。何より市内西部には“坂戸ニューシティにっさい”がある。宅地あり、自然あり、通り沿いには、コモディイイダ、マツモトキヨシ、パシオス、ビッグ・エー、モスバーガー、はま寿司と、生活に必要な店はすべて揃っている。今後も坂戸は都心のベッドタウンとして栄えていくだろう。つまり居住にも不動産投資にも最適の街だ。しかし坂戸営業所の業績は芳しくない。これはいかなることか。坂戸ニューシティにっさいがあるのに業績横ばいとは、いかなることか」
最近、西野はことあるごとに、にっさいが、にっさいが、と宣(のたま)っていた。太一もにっさい地域は何度も社用車で訪れている。ニューシティなどと謳ってはいるが、正直、ロードサイドにチェーン店が建ち並ぶ典型的な郊外の街並みという印象しかない。にっさいの何がそこまで西野を惹きつけたのか──。と、西野は太一を名指しして言う。
「坂戸営業所の業績が伸びない根本的な原因は、どこにあると思う?」




















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