「この給料泥棒が!」部下を罵倒し続けた38歳パワハラ上司が"社会的に"抹殺された恐怖の復讐劇 『子供部屋同盟』1章③

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芥川賞作家✕東洋経済オンラインの「異色コラボ」連載小説!
「子供部屋おじさん」が、あなたの復讐、請け負います。パワハラ、詐欺、痴漢冤罪(えんざい)、書店万引き――。裁かれぬ現代社会の悪を、人知れず断罪する者たちがいた。ダークウェブに潜む謎の復讐代行組織「子供部屋同盟」。
社会から疎外された「子供部屋おじさん」たちが、その特異なスキルを武器に、歪んだ正義を執行する。芥川賞作家・高橋弘希が放つ痛快無比の世直しエンタメ『子供部屋同盟』より、第1章を4日に分けて毎日お届けします(今回は3日目)。

坂戸営業所の定例会議

坂戸(さかど)営業所、定例会議の日が訪れた。定例会議は毎月二十五日の午後六時から、営業所の職員全員参加で行なわれる。

子供部屋同盟
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二階会議室に、太一を含めた職員九名が着席して、議長の西野はホワイトボードの前に立つ。

平素は口汚く罵る西野だが、会議では畏まった口調で喋(しゃべ)る。本社へ議事録を提出する必要があるからだ。

「私はこの坂戸という街に可能性を感じている。都心までは東武東上線急行でおよそ四十五分、それでいて家賃は手ごろ。何より市内西部には“坂戸ニューシティにっさい”がある。宅地あり、自然あり、通り沿いには、コモディイイダ、マツモトキヨシ、パシオス、ビッグ・エー、モスバーガー、はま寿司と、生活に必要な店はすべて揃っている。今後も坂戸は都心のベッドタウンとして栄えていくだろう。つまり居住にも不動産投資にも最適の街だ。しかし坂戸営業所の業績は芳しくない。これはいかなることか。坂戸ニューシティにっさいがあるのに業績横ばいとは、いかなることか」

最近、西野はことあるごとに、にっさいが、にっさいが、と宣(のたま)っていた。太一もにっさい地域は何度も社用車で訪れている。ニューシティなどと謳ってはいるが、正直、ロードサイドにチェーン店が建ち並ぶ典型的な郊外の街並みという印象しかない。にっさいの何がそこまで西野を惹きつけたのか──。と、西野は太一を名指しして言う。

「坂戸営業所の業績が伸びない根本的な原因は、どこにあると思う?」

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