「この給料泥棒が!」部下を罵倒し続けた38歳パワハラ上司が"社会的に"抹殺された恐怖の復讐劇 『子供部屋同盟』1章③

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太一は答えられない。

「ここの営業所の業績は、埼玉西地区でも下から数えたほうが早いくらいだ。坂戸ニューシティにっさいという、有利な条件があるにもかかわらずだ。上層部でも、緊急に対策が必要な営業所だと判断されている。私はAMとして、上層部の期待に応えねばならない。この地域の内情については、私より佐藤君のほうが詳しいはずだ。なにせ君はここですでに二年半も勤務している。私よりも先輩だ。だから私に教えてくれないかね。にっさいがあるのに、なぜ業績が伸びないのか教えてくれないかね」

太一は答えられない。

「で、業績不振の理由は?」

「黙っていても仕方ないじゃないか。こんなふうに職員全員が集まって、貴重な勤務時間を割いているんだ」

他の職員は憐みとも侮蔑とも取れる瞳を、太一へ向ける。あの冷たい脂汗が背中に滲(にじ)む。

「やはり川東コーポの影響が大きいのではないでしょうか」

「川東コーポは数か月以内に潰れるのか?」

「は?」

「川東コーポは数か月以内に潰れるのかと訊いている」

「いえ、業界最大手ですし、まず潰れることはないかと」

「なら坂戸営業所は、川東コーポが東口にある状態で業績を上げねばならないだろう。近隣に川東コーポがある。これは最初から分かっていることだ」

「はい」

「ではなぜ坂戸営業所の業績が横ばいなのか、営業所の先輩として私に教えてくれないかね」

「これまで努力してきましたが、力及ばず申し訳ありません」

「君が努力したかどうかは訊いていないんだよ。結果が出ていない理由について訊いているんだ」

「申し訳ありません」

「いや謝れだなんて言ってないよ。理由を訊いているんだ」

「はい」

「はいじゃなくて、理由だよ理由。君、日本語は分かるよね?」

「はい」

「で、業績不振の理由は?」

「すみません」

実に三十分にわたり太一は全職員の前で吊るし上げられ、さしたる結論も出ないままに定例会議は終わった。会議後にホワイトボードの片づけをしていると、年配の男性事務職員が話しかけてきた。

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