管理不能と化した国内工場 PEC産業教育センター所長・山田日登志氏①

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やまだ・ひとし PEC産業教育センター所長。故大野耐一氏から学んだトヨタ生産方式の伝道者であり、またの名を「工場再建請負人」。1939年岐阜県生まれ。南山大学卒業後、中部経済新聞社、岐阜県生産性本部を経て、78年同センター設立。『ムダとり』ほか著書多数。

赤字工場の再建を請け負って30年。現場のムダを徹底的に排除する、の一点で「ムダとり」に駆け回ってきました。これまでに手掛けた会社の数はだいたい340~350社、工場数で言ったら1000は超えてると思う。1980年代以降、ソニー、NEC、キヤノン、トステムほか、日本を代表する会社の工場も再生させてきました。

最近は「ものづくり」の影も薄くなって、だいぶ暇になったかって? いやいや、むしろ大忙しです。

今、日本の中小企業はみんな困ってる。大企業の工場、資本も技術もこの10年すごい勢いで日本から出ていった。数年前には、団塊世代の退職で現場の技術継承をどうしようかという悩みを、まだ持ちようがあった。でも今は、現場そのものがどんどんなくなってる。それで、資本も技術もないで、海外に出ていけない工場だけが日本に残ってる。そこにあるのは、工場の管理そのものがもうできなくなってる現実です。

ムダをなくし、売れる分だけ作るために作り方を変える

お客の注文はますます多様になり、多品種でロットはバラバラ。注文は毎日変わる。一方、経営者の頭は、標準化された製品をまとめて大量に安く作るという固定観念に縛られたままや。だから管理不能工場になってまってるの、どこの中小企業も。

そもそも経営者自身が、現場に行っても工場のどこが悪いのか、どこを改善すべきか指示できんようになってまったね。2代目社長で大学は出てるけども現場の経験がない。景気が悪いのは知っとるよ。でも、俺の会社はどこが悪いで活躍できんのやということが、まったくわからん経営になっとる。現場は工場長や課長に任してある、俺は経営全般をやってるんだ、というようなね。それが経営者の8割です。

現場から経営が遊離しすぎたね。生産計画でも資材発注でも、コンピュータによる管理が主流になっとるでしょ。コンピュータ見て、現場をわかっとると錯覚するのよ。

僕は工場行くと、その足でまず出荷場を押さえる。そこがお客さんとの接点やから、そこをキチッとしないと工場管理はできない。で、今日の出荷はどれくらいですか、その中身はと聞くと、社長も工場長も課長も知らない。知ってるのはコンピュータと担当者だけ。誰も関心ない。作ったものは倉庫に入れたら終わりで、俺たちは生産計画どおりに作るだけだと。これではダメ。作りすぎのムダ、在庫のムダをなくし、売れる分だけ作る。僕が実践してきた「工程改善」は、そのために工場での作り方を変えることなんです。

週刊東洋経済編集部
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