現場のムダとりが人を育てる PEC産業教育センター所長・山田日登志氏②

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やまだ・ひとし PEC産業教育センター所長。故大野耐一氏から学んだトヨタ生産方式の伝道者であり、またの名を「工場再建請負人」。1939年岐阜県生まれ。南山大学卒業後、中部経済新聞社、岐阜県生産性本部を経て、78年同センター設立。『ムダとり』ほか著書多数。

豊かになるというのはムダが出る構造になるということ。みんな同じもの買いたくないやろ。Aという製品をダーッと作ったら、急に売れんようになって在庫がたまって、ラインがパタッと止まるんやね。すると今度は材料が止まってまう、置き場所がなくなる。現場行くとほんと混乱しておるんですよ。

「適正在庫」という言葉がもうなくなっとるんです。物不足の時代なら見込み生産でまとめて作って、適正在庫ちゅうのはある程度必要だった。でも今は在庫抱えて売れるもんなんかありゃせん。すぐに次の新製品が出てしまうで、前の製品は早々に投売り。100円ショップの商品なんて70%くらいは日本製ですよ。

作りすぎの在庫をなくす最大のポイントは、仕掛品をなくすこと。これだけ少量多品種でサイクルが短い時代に仕掛品は悪やねえ。ベルトコンベヤーも悪。あれは運搬だけに使っとるもんでしょ。ボール盤の後工程が旋盤ならそばに置けばいい。ヒトからヒトへモノを3メートルを移動させる間、それは仕掛品です。

これが本当に1割儲かる秘訣

ベルトコンベヤーを撤去して、ラインを「間締め」する。1個ずつ手渡しすれば、時間も電気代も仕掛品の停滞も省けるでしょう。ベルトコンベヤーが占めてた場所が空き、仕掛品を置く場所も減らせる。すると新しい空間が生まれる。それをいかに有効利用するかが「活スペース」になるね。

ラインを間締めして、一人で複数の作業ができるようにすれば、生産性は2割上がるんですよ、ソニーであろうがキヤノンであろうが、中小企業であろうが。そして、そこから生まれる余剰人員をどう活かすかが「活人」。

たとえば外注で作っとる段ボール、1個5円儲かるなら、ラインから抜けた人が1個5円の外注を取ってくるだけでも価値がある。勉強してコンビニの店やるとかもある。そんな活かし方ができる経営ならすごいよって言ってるの。活人がリストラの機会になってまうようなことがいちばん怖いから。このご時世、首切ってまうところもあるしね。だから僕はそれを最小限にしようと、どう活かすかまでやるんです。

そこに合ったムダのとりようを教えることで、現場が変わる。人が育つの。一人ひとりが仕事への意欲や工夫を取り戻す。こないだも、あるケーキ工場の女性が、棚の使い方を変えて1個取り出すのに15秒かかってたのを5秒に短縮できました、それだけで年間18万円効果があります、と。社員が自分で知恵を出して、やってくれるようになる。これが本当に1割儲かる秘訣なのよ。

週刊東洋経済編集部
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