無駄学 西成活裕著
無駄を論じた書物というのはありそうでなかっただけに誰もが引き込まれる。
「無駄、むだ、ムダ」に分けて無駄を定義したうえで、無駄に定量的に接近しようとするなど、開拓者としての苦労がしのばれる内容である(数値化、数式化まではいっていない)。
中核をなすのは無駄という視点からみたトヨタ生産方式で、多くの経営書やノウハウ本とは違った説得力がある。山田日登志氏による無駄取り最前線の紹介も明快で、生産現場での無駄の排除を通じた物づくり日本の競争力を理解するうえでも役に立つ。そして社会、家庭の無駄へと進んでいくのだが、このあたりの著述はやや常識的で今後の深化が待たれるところだ。
時間、労働力、スペース、資源、エネルギーなど確かに世間は無駄だらけだが、注意書きの無駄、過保護などと対象を広げすぎの感もある。であれば逆に無駄の効用も議論してはと言いたくなった。ともあれ続編が楽しみな快著である。(純)
新潮選書 1050円
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら