実は、この方法は、イギリスやアイルランドですでに行われ、その実効性が証明されている方策である。
イギリスにおいて、これは「ウィンブルドン現象」と呼ばれた。アメリカや、ドイツなどヨーロッパ大陸の金融機関が進出し、それまでシティを牛耳っていた人たちとは異質の専門家が入ってきた。それによって、イギリスでは現代的な先端金融が主力産業となったのである。
アイルランドの場合は、政府の積極的な外資誘致政策により、マイクロソフトやグーグルなどアメリカのIT企業が進出して、ヨーロッパ総支社的な現地法人をアイルランドに置くことによって、それが実現された(アイルランドは現在、金融機関の救済が問題になっているが、IT産業が強いことに変わりはない)。
他国で教育された人材を使うのだから、教育費分を負担するのは当然だ。つまり、給与水準はかなり高くする必要がある。この目的にとって、円高である今は好機である。円の価値は07年に比べてさえ5割ほど高くなっている。
将来、円安になり、日本で働くことに経済的な魅力がなくなってからでは手遅れだ。外国人の専門家を日本に招くのに、あまり時間的余裕はないのである。
(撮影:尾形文繁)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)
(週刊東洋経済2010年12月4日号)
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