1つはインド式「桁表示」への対応だ。グローバルスタンダードでは3桁区切りでカンマが打たれるが、インドでは最初だけ3桁区切りで、それ以降は2桁区切りとなる。
競合メーカーが前者の表示法を採用するのと対照的に、カシオはインド人が見慣れている後者を採用。数字の読みやすさを向上させた。一見当たり前の話しだが、カシオはしっかり現地のニーズに対応した。
もう1つは「検算機能」だ。計算結果が出た後、それを巻き戻すもので、競合製品では多くても99ステップ前までが限界だった。
カシオは、それを150ステップにまで拡張。これが当たった。レジが日本ほど普及していないインドの小売店で、売上計算などに役立つと好評。電卓のラインナップは2013年度、5年前の約2倍となる120万台を販売。今年度は一気に200万台超えを目指している。
電子楽器は、営業マン自らが演奏して売り歩く
電卓だけではない。「アジアならでは」の売れ方がヒットのきっかけになったのが「電子楽器」だ。
もともとカシオは1990年代、日本をのぞくアジア・中近東、シンガポールやドバイでは「ミニミニ鍵盤」という電子キーボードを販売していた。西洋音階のためインド音階とは異なるが、メジャーなインドの鍵盤楽器のひとつであるハルモニウムと同形状であるため、旅行や出稼ぎでシンガポールを訪れたインド人の親たちが母国に持ち帰って、子どもに遊ばせるようになり広がっていった。
インドの鍵盤文化に目をつけた競合メーカーも、ハイエンドモデルを販売するようになっていったため、カシオも上級モデルの新商品開発に着手。そして生まれたのが「CTK-810IN(61鍵)」。その後、さらにユーザーの要望を取り入れ、音質・機能を向上させて発売したのが、最上位機種「CTK-7300IN」である。
これらは西洋音階を奏でたミニミニ鍵盤の逆を行くように、あえてインドならではの音階を奏でるよう、現地化されたものだ。
インドの音階は「ドレミ」ではない。“ラーガ”というインド音階に沿った「サレガマパダニサ」だ。より自国らしい楽曲を演奏できる新製品のアンバサダーに、アカデミー賞で作曲賞を受賞した映画「スラムドッグ$ミリオネア」で音楽を担当したA.R.ラフマンサン氏を2014年9月から起用。セレブリティーの影響力が大きいインドで、今後のさらなる躍進を期待している。
楽器の販売は音を聞いてもらわなくては始まらない。カシオの営業マンたちは楽器屋や商業施設のイベントスペースに楽器を持ち込んでは、バイヤーや客を相手に、自ら楽曲を演奏してみせ、音色の美しさを売り込む。
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