最後が「プロジェクター」。ラインナップには価格が競合の10倍近くする超が付くほどのハイエンドモデルも存在するのだが、これもなかなかの好調ぶりだ。カシオ製品の特徴は「水銀レス」。水銀を使用する競合製品では、画像を投影するのに必要なランプを頻繁に交換しなければならないという、ユーザーも気づいていない課題があった。
なぜライバルの10倍の価格でも売れるのか
ライバルメーカーのランプの持続時間は約3000時間。それに対し、2010年に発売された水銀レスの新製品のそれは、平均なんと2万時間。しかし価格は高くなる。たとえば、中国製の競合製品なら2万ルピー(約3万6000円)のところ、カシオのラインナップは8万5000ルピー(約15万円)から20万ルピー(約36万円)という品揃えだ。プロジェクターに、それほどのおカネをかける企業はいるのか。
そこで同社では、ターゲットを絞った。世界中からITビジネスのオフショアを多く請け負うインドには、開発やカスタマーサポートのためのセンターが多く存在する。
そこでは社員教育を目的としたプログラムが連日行われ、プロジェクターを使う機会も多い。そうしたヘビーユーザーの企業に、導入の合理性をアピール。製品の保証期間を競合よりもはるかに長い、5年に設定したことも顧客の背中を押した。
こうしたローカライズのアイデアは、現地で採用したインド人の社員が自発的に、そして練りに練った状態で提案してくるという。「私は社員にまかせっきりです」と中社長は謙遜するが、一方で「インドのビジネスは、短期間では結果は出にくい。10年とか時間をかけて腰を据えて取り組まないといけない」とも。では、中社長は、3度の駐在(通算の駐在歴12年)で、何をしてきたのか。
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