仕事をしながらコーヒーの知識を深めていった大塚は、ある時、世界でも名の知られる北欧の有名コーヒー店がペーパーカップを使い、500円ほどでスペシャルティコーヒーを提供していることを知る。2006年頃の日本にはなかったスタイルで、大塚は「日本で同じことをやりたい!」と気持ちが昂った。そして、スペシャルティコーヒーのカフェを開くという新たな目標を持った。
南蛮屋で4年ほど修行を積んだ大塚は、2010年末から独立に向けて動き始めた。物件を探す中で、ピンときたのが恵比寿駅西口から徒歩1分ほどの物件だっ た。 その物件を狙っていたのは他に13人もいた。そのうえ保証金等を含めると予算の3倍になったが、大塚は「なんとかなる」と見切り発車で申し込んだ。 結果的には無謀にも見えるその決断が、吉と出た。
プレオープン初日に200人が来店
「予算もぜんぜん足りなかったし、僕は商売の経験もないので正直ダメもとでした。だから、大家さんからOKの連絡をもらった時は、『なんでうちだったんだろう?』と不思議でしたね(笑)。話を聞いたら、その物件を貸し出す前に入っていたのが喫茶店で、大家さんがコーヒー店にしたかったそうです。事業計画書をしっかりと書いて提出していたのも良かったのかもしれません」
宝くじに当選したような喜びもつかの間、大塚は不足した資金を補うために友人、知人に頭を下げて金策に奔走した。期限までになんとか資金を集めて不動産屋に支払いを終えたが、手元に残ったのは5000円。もちろん業者に内装を頼む余裕はなく、応援に駆け付けた友人たちと廃材をかき集め、自分たちで内装を進めた。エスプレッソマシンを購入することもできず、ドリップ台は手作りした。 猿田彦珈琲という個性的な店名も、出世払いで店の看板のデザインをしてくれた友人の奥さんから「猿田彦珈琲ってどう?」と提案されたため、他のアイディアもあったがその名前に決めたという。
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