「読みたい本」が見つかる!「いい書店」3大共通点 電子書籍にはない「リアル書店の価値」とは?

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最後は「自分だけの『セレンディピティにあふれた』書店を見つけること」である。

【3】自分だけの「セレンディピティにあふれた」書店を見つける

「セレンディピティ」という言葉がある。求めているものとは違うけれど幸運を得てしまう「偶然力」みたいな意味の言葉だ。もともとは『セレンディピティ物語 幸せを招(よ)ぶ三人の王子』(藤原書店)という童話からきている。

古代のスリランカにあったというセレンディップ王国で、三人の王子が竜を鎮める巻物を探し、インドからペルシャへと旅する。しかし最後まで巻物は見つからない。その代わりに王子たちはさまざまな別の幸運に出会い、幸せな結末を迎えたのだった。

求めていたものとはまったく異なる「発見」や「幸運」が偶然に転がり込んでくる、それが「セレンディピティ」だ。本屋さんに足を運ぶという行為は、まさにこのセレンディップ王国の王子たちが旅に出るのと同じなのである。

だから、わたしがおすすめしたいのは、自分にマッチした「セレンディピティにあふれた本屋さん」を見つけることである。

本と読者のあいだには「相性」がある。だから、どういう本を選んでいるかによって、本屋さんと読者のあいだにも「相性」が出てくる

しかし、世の中の人全員と相性がいい「セレンディピティにあふれた本屋さん」なんてものは存在しない。自分だけの「セレンディピティにあふれた本屋さん」を見つけるのだ。

優れた書籍は1冊で「多様な視点」を与えてくれる

ウェブメディアの分量では、1つひとつの記事は要素として小さく、そこから「多様な視点」を得て、世界観をスケッチできるようにするのは、けっこう難易度が高い。それに対して、書籍は「物事についての全体像を知る」うえで最も良質なガイド役になってくれる可能性が高い。そこに本を読む大きな意義がある。

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「知肉」を育てていくには、現時点での「多様な視点」からテーマをさまざまに照射することで、全体像のイメージを持つことだ。優れた書籍では、1冊の本の中でその作業をすべて完了してくれている。「アウトライン→視点→全体像」という流れを全部用意してくれている

ぜひ、「リアル書店の価値」をおおいに活用して、「知識」や「視点」を身につけ、最終的にはそれらを自分の「知肉」にしてほしいと思う。

佐々木 俊尚 作家・ジャーナリスト

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ささき・としなお / Toshinao Sasaki

1961年兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。毎日新聞記者、『月刊アスキー』編集部を経て、2003年よりフリージャーナリストとして活躍。ITから政治、経済、社会まで、幅広い分野で発言を続ける。最近は、東京、軽井沢、福井の3拠点で、ミニマリストとしての暮らしを実践。『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『そして、暮らしは共同体になる。』(アノニマ・スタジオ)、『時間とテクノロジー』(光文社)など著書多数。

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