「読みたい本」が見つかる!「いい書店」3大共通点 電子書籍にはない「リアル書店の価値」とは?

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では「いい本屋さん」というのは、何が普通の本屋さんと違うのだろうか? それは「本棚の文脈」である。この「本棚の文脈」は、わたしが大好きな千駄木の「往来堂書店」が打ち出して有名になった言葉だ。

【2】いい書店には「本棚の文脈」がある

「本棚の文脈」について知るために、たとえば「猫の飼い方」という実用書があったとしよう。みなさんは、この本のとなりに、どんな本を置けばいいと考えられるだろうか?

実用書を並べる棚だったら、「猫の飼い方」のとなりには「犬の飼い方」や「熱帯魚の飼い方」が並んでいるのが普通だろう。しかし、猫を飼おうと思って勉強しようと「猫の飼い方」の本を買いに来た人が、「犬の飼い方」や「熱帯魚の飼い方」に興味を持つだろうか? 

「本棚の文脈」から思いがけない本との出会いが生まれる

猫と犬と熱帯魚を同時に飼いはじめようと決心した人というのは、わたしにはあまり想像できない。猫を飼おうと思っている人は、基本的には猫好きである。

だったら、犬や熱帯魚の本ではなく、「猫つながり」で別のタイプの猫の本を並べるほうがいい。だからといって、別の出版社から出ている「誰でも飼える猫」「猫飼い方入門」などの類書を並べるのも芸がない

入門書を何冊も買うのはムダだし、それだったら書店員さんの目利きで「猫の飼い方を学ぶのなら、この1冊!」とポップをつけてベストなチョイスの本を並べてほしい。だから、答えは別のところにある。

「猫の飼い方」のとなりに置くべきは、たとえば「猫が出てくるエッセイや小説」だ。猫の世界に浸っていられるような「猫気分」の本を選んで、「猫の飼い方」の横に並べていくのだ。これが「本棚の文脈」である。

いい本屋さんというのは、このような「本棚の文脈」を大事にしている店のことなのだ。オリジナルな面白い「文脈」を目利きの書店員さんが持っていると、思いもよらない本の存在を知ることができる

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