ところがこの学生は、エントリーシートで学生時代に力を入れたことを聞かれると、「ピカソの絵を模写したこと」と、答えていたのである。
絵の写真を見せてもらうと、ピカソをたしかに上手く模写できていた。ただ、ピカソを模写する技術がどう会社員として活躍できるかを示す材料としては、不十分だっただけである。
なぜ、そのエピソードをエントリーシートに書いたのか。それは彼にとって、体育会での成績も、海外経験も「一番力を入れたこと」ではなかったからだ。彼は真面目に、問われた質問に答えていただけである。だが、事実としてエントリーした会社には落ち続け、就活うつになる寸前だった。
そこで彼に「受ける会社が求める人材像に合致するようなエピソードを選べばいいよ」と伝えたところ、あっという間にトップ企業へ内定した。こんな単純なことで……と思うかもしれないが、愚直に質問に答えるがあまり、ワナに陥る学生は少なくないのだ。
哲学よりも「求める人材像」に合わせる
ここまでご覧いただいた方には、自己分析の正体も見えてきたはずだ。自己分析とは、自分の過去のエピソードと、「受ける会社が求めていそうなエピソード」を合致させる流れでしかない。そこには就活生の哲学も、自尊心もかけなくていい。むしろかけないでほしい。
その企業に通ったからあなたの人生の価値が上がるわけではないのと同じように、落ちたってあなたの人生はそのままで尊いのだ。就活は社会人適正チェックではない。新卒採用も、大多数の会社で採用されている「人を採る」システムでしかない。
志望企業に落とされてもあなたの人生は否定されない。あなたは、そのままの自分に自信を持っていい。
もしこれをご覧になっている方で、自己分析のワナに陥りそうだと思うなら……。まず『エントリーシートの目的は「会社でそれっぽく働けそうか」を見ているだけだ』と気づくことから始めよう。まずは企業分析をして、その会社にいそうな典型的会社員の特徴をつかもう。そして、自分もそういう社員になれると見せられそうなエピソードを、過去の経験から洗い出して書くことだ。これだけで、内定確率はぐっと上がる。
詳しいエントリーシートの書き方については、『改訂版 確実内定』に書き記している。こちらもご覧いただければと思う。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら