なぜこのような悲劇が起きるのか。答えは、エントリーシートの目的を見失っているからだ。
エントリーシートは、各社で設問内容は違えども、聞いていることはたったひとつ。「あなたは自社でそつなく働ける人材か」だけである。それは高校・大学受験でさまざまな受験形式や問題が出てきても、結局は「その大学でそつなく卒業できる人材か」を問うているのと同じだ。
だから「学生時代に一番力をいれたこと」を聞かれていても、本人が信じる「一番頑張ったこと」を書く必要はない。その会社でそつなく働ける自分を見せるような「頑張ったこと」を書けばいいのである。自分史を書き起こしつつ「A社は前例のないことに挑んだ人材がほしいと言っていたな……じゃあ、この経験を書こうかな」とピックアップすれば十分なのである。
自分だけで考えて落ちるのはリスク
むしろ、自分だけで考えた「学生時代に力を入れたこと」を書くことは、リスクでしかない。なぜなら、それで企業から落とされ続けると、あたかも自分の人生を否定されたように感じてしまうからだ。
企業は就活生の人生の価値を判定しているわけではない。そんなことは、社会人なら誰でもわかっていることだろう。しかし、就活生にとってはそうではない。就活をこれまでの人生の総決算のように捉えている学生は多い。
そこで渾身の「学生時代に力を入れたこと」を書いて落とされたら……。もし、企業に合わせた内容で提出していれば「企業が求める人材像とズレがあったかな」「同級生と競り負けたかな」と冷静に分析できる。
だが、本音でぶつけてしまった結果、それが社会人としてどう働けるかの参考にならない事例だったら……? 就活で実際に求められているエントリーシートの内容が「そつない社会人としての資料」とも知らず、自己否定に走ってしまう学生は少なくない。
実際に、誰しもが認めるエリート経歴を持った学生が、100社落ち続けた例があった。ある男性は、名門高校出身。英語はペラペラなうえ、体育会でも全国レベルの成績を収めていた。さらに、成績も優秀で友達も多く、絵に描いたような「エリート学生」だった。
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