「フォーマット取引」はテレビを潤すか? 世界に広がる、TBS「SASUKE」の秘密
民放の海外ビジネスに詳しい人物に話を伺ったが「日本のドラマの売り上げそのものは決して小さくはないが、赤字ではないか」と話した。たとえば1時間枠向けの日本ドラマは、ベトナムで1回の放映料が1000ドル程度だという。
これがタイなどであれば2000ドルまで上がるが、アジア諸国での放映権料は1時間2000ドルぐらいが日本ドラマの上限の相場とのこと。多くの国に販売することでキャッシュフローは確保しているものの、アジア地区への販売で利益を出すのは基本的に難しい。
見込みアリ?日本のフォーマット販売
注目されているジャンルもある。日本製コンテンツの中にあって、MIPで話題に登ることが多くなっているのが、番組フォーマットの販売である。番組フォーマットとは、いわば番組制作アイディアや素材を販売するものだ。たとえばネットで「Hole in the Wall」と動画検索をかけると、くりぬかれた壁を通り抜けるコミカルな映像を発見できるはずだ。
これは”とんねるずのみなさんのおかげです”の1コーナーである「脳かべ」をフォーマット販売したものだ。着ている衣裳までそっくりなことに驚くが、このHole in the Wall、実は40カ国以上に販売された大ヒット番組フォーマットである。”脳かべ”がヒットできた理由は、万国共通、だれが観ても分かりやすい文化的中立性が高い上、シンプルで運用しやすく、製作コストも高くないといった特徴があるからだろう。
番組フォーマットのライセンス料は、番組製作費の10%前後。内容によって異なるため一概には言えないが、米国のように1時間枠の製作費が5000万~1億円程度。その10%と仮定すると、500万~1000万円がフォーマットを開発したテレビ局の収入となる(ただし、製作費予算は国ごとに異なる広告費用によって大きな違いがある。米国はベストケース)。
番組フォーマットは純粋にアイディア勝負となるため、人種や言語による不利が基本的になく、文化的な中立性も企画次第で保つことができる。ドラマ輸出に比べるとハンディキャップが少ないと言えるだろう。
たとえば日本テレビは、一般視聴者の起業家が出資者に事業計画をプレゼンテーションし、出資評価をしてもらう「マネーの虎」の番組フォーマットを英BBC Twoに販売した。Dragon's Denの名称で放送されたマネーの虎は、2005年から放送が開始され、現在も制作・放映が続けられている。マネーの虎人気は拡がりを見せてライセンス先を増やしていたが、2009年に米ABCがShark Tankの名称で放送を開始。当初は人気薄だったものの、シーズン2から盛り返し、シーズン6となる今年は人気番組の地位に登り詰めている。
詳細なライセンス条件は明かされないが、たとえば昨シーズンは年間に29エピソードが放映された。メジャーネットワークのプライムタイム(金曜夜9時)に放送されていることを考えると年間製作予算は30億円程度と推定される。仮に10%をライセンス条件とするなら、3億円が(米国向けの)フォーマットライセンス料として日本テレビに転がり込むことになる。
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