本連載の3回目に「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京系)がいかにイノベーションの宝庫かをお伝えしました。同番組はバラエティ番組ですが、実は硬派な報道番組にも、他番組に大きな影響を与えたイノベーティブな番組があります。「真相報道バンキシャ!」(日本テレビ系)です。
筆者はNHK報道局の出身ですが、NHKの同僚たちもこの番組には注目していると言います。「真相報道バンキシャ!」は、報道番組をどのように進化させたのでしょうか?
日テレ”圧勝の日曜日”を完成させた「バンキシャ!」
テレビ番組の週間視聴率ランキングを見ると、在宅率の高い日曜日の番組が多くランクインしているのがわかります。中でも、日曜日のゴールデン帯の日本テレビの強さは誰もが認めるところです。「笑点」から「おしゃれイズム」まで、ほとんど視聴率が落ちていません。この“圧勝の日曜日”が完成したのが、2002年に「バンキシャ!」が始まってからではなかったかと記憶しています。
「真相報道バンキシャ!」の放送が始まったとき、筆者は「バンキシャ=番記者」(情報を得るために、有力な政治家、特定の有名人などに密着して取材する新聞社や放送局の記者)と言うかぎりは、記者を全面に出した番組かなと思っていました。アメリカの「60ミニッツ」(CBS)、「20/20」(ABC)などは、すべてスター記者/アンカーが全面的に画面に出て、ひとつのリポートを完成させるスタイルだからです。
ところが、「バンキシャ!」は、アメリカ流ではなく、極めて日本人らしい独自の手法で、報道番組を進化させました。
①ニュースを立体的にとらえる
まずひとつ目が、ニュースを立体的に伝えようとしたことです。通常、ニュースを制作するときは、記者から出稿された原稿を基に、ディレクターがその原稿の内容に合わせて映像を張り付けるという作業をします。これを業界ではよく「塗り絵」をする、と言います。塗り絵をする映像は、事件の現場映像、犯人の写真、関係者の証言、記者会見映像、海外からの配信映像など、どの放送局も似たり寄ったりの映像となります。
しかし、「バンキシャ!」は、他局のニュースと差別化するために、こうした2次元の映像を、3次元で見せようとしている努力が随所に見られます。徹底的な「再現」へのこだわりです。
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