「真相報道バンキシャ!」に日本的革新を見た ”報道イノベーション”の背景に、4つの仕掛け

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それはスタジオの模型であったり、実物大のセットであったり、再現ドラマであったり……。

同番組のウェブサイトを見てみると、アシスタントディレクターの青木さんが、2014年3月23日の番組で使用した実物大セットをどうやって作ったかについて報告しています。この日は、ベビーシッターの自宅(埼玉県)で、預かっていた2歳の男の子が亡くなっていたという事件を取り上げたのですが、間取り図を基に現場を実物大で再現。部屋や家具をすべて日本テレビのスタジオにセットとして建て込み、撮影したそうです。

この実物大セットを使用しての事件の再現は、手間もおカネもかかるため他局ではあまり見たことがありませんし、もちろんアメリカのニュースでも見たことがありません。しかし、視聴者としてみれば、CGで見るよりも何倍もリアリティをもってニュースの内容を知ることができます。筆者は常々、ニュース番組で「東京ドーム何個分の広さです」というナレーションを聞くと、「それって一体どのぐらい?」と思ってしまうのですが、そうした視聴者の疑問に答え、実際に見せてくれるのが「バンキシャ!」だと言えるでしょう。

②ニュースを多面的に見せる

2つ目のイノベーションは、他局とは違った視点でニュースを切り取ろうとしていることです。この番組には実に多くの「カメラ」が登場します。定点カメラ、防犯カメラ、隠し撮りカメラ……。それらは、ピントも合っていなかったり、ブレていたりもしますが、ひとつのニュースを別の視点から見せる効果があります。

たとえば、7月13日の放送では、台風8号の影響で、9日、長野県南木曽町で土砂災害が発生し、母親1人と子供3人が巻き込まれ、長男(12)が死亡した事件を取り上げました。ここで番組が注目したのが、国土交通省が発生地近くに設置していた「土石流監視カメラ」です。そこで撮影された映像を入手し、土石流発生までの60分で、1時間前、55分前、20分前、10分前で、梨子沢の水の色がどのように変化していくか、検証しました。

この映像を見て、筆者は一視聴者として、「このカメラがあって、水の色が刻々と変化していくのがわかっていたのなら、もっと早く避難勧告が出せたのではないか。何のための監視カメラか」と思いました。こうした客観的な映像は、視聴者がひとつのニュースに対して、自分の意見を持ったり、考えたりするきっかけを与えてくれるのです。

さらに番組は専門家とともに空から現場を撮影し、新たな崩落現場や、崩落しそうな箇所を指摘しました。他局のニュースでも空撮はありましたが、あくまで崩落現場そのものをとらえた映像であり、“今後、崩壊しそうな箇所”を探すために目的を持って撮影された映像ではなかったと思います。

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