「真相報道バンキシャ!」に日本的革新を見た

”報道イノベーション”の背景に、4つの仕掛け

番組が始まった当初は、よく北朝鮮への潜入取材映像が流されましたが、定点カメラ、空撮などに加え、記者目線の映像が多用されているのも、ニュースに臨場感を与えています。

③自分の目で確かめる

3つ目が、検証実験です。たとえば、2014年4月に放送された韓国のセウォル号沈没事故のニュースでは、プールの上にラジコンで動く船を浮かべ、コンテナに見立てたおもりを積み、おもりを固定した状況と固定しない状況で走らせる、という実験をしました。すると固定しないときに、船は急旋回して転覆。

急旋回だけではなく、積み荷が十分固定されていなかったことも転覆の一因であることを突き止めました。

こうした検証実験は、「ためしてガッテン」(NHK)などNHKの科学番組が得意としているところですが、報道番組で大掛かりな検証実験をしたのは、この番組が初めてではなかったかと思います。

「バンキシャ!」が始めた手法は、その後、多くの情報番組や報道番組で取り入れられています。アメリカの放送局の関係者から、「日本のニュース番組は、おカネがあって恵まれているね」と言われたことがありますが、精緻な模型を作ったり、科学番組さながらの実験を行ったり、巨大セットを作ったりするのは、アメリカの報道番組では考えられないことです。アメリカでは「ニュースは儲からない」として、予算がどんどん削られているからです。

それに何と言っても、スタッフの労力。1週間という短い制作期間で、時間がかかる検証や実験をやってしまう……。さらに長期密着もあります。しかも、この番組はNHKとは違って少人数で制作していると聞きます。それならば筆者などは、もっと「番記者」が表に出ればいいと思いますが、そこは日本人らしい奥ゆかしさなのか、スタッフも記者も黒子に徹しています。

このように見ていくと、世界的にも比較的予算が潤沢で、かつ、スタッフが番組のために労力を惜しまない日本の報道番組が、独自に進化した結果が「バンキシャ!」と言えるかもしれません。過去には誤報が発覚し陳謝するなど、いくつかの残念な事件もありましたが、この番組が日本の報道番組に与えた影響は大きいと思っています。

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