筆者はコメンスキー福音主義神学大学のミラン・オポチェンスキー教授と、なぜチェコの神学生が社会主義的価値観に背を向けるかについて議論した。
──ミラン、スターリン主義に対する反発はよくわかる。しかし神学生と話していると、スターリン主義や改革派マルクス主義だけでなく、社会民主主義的な理念までを忌避しているように思えてならない。
「そのとおりだ。そもそも平等という価値観自体に対して後ろ向きになっている」
西側の自由や市場経済に魅了されている
──イエス・キリストはつねに、貧しい者、虐げられた者の側にいた。とくにヤン・フス(15世紀の宗教改革者)の伝統を継承するチェコのプロテスタント教会では、平等という価値観は大切にされてきたはずだ。ヨゼフ・ルクル・フロマートカは、無神論的共産主義が生まれてきたのは、近代資本主義システムにおいて構造的に虐げられている労働者に対し教会がケアを怠ってきたからであると、中産階級と同化してしまったチェコのプロテスタント教会を批判した。こういう立場を現在の神学生はとらないのか。
「残念ながら、チェコスロバキアの社会全体が西側の自由や市場経済に魅了されている。西側との壁を壊し資本主義経済に転換すれば、チェコ人もスロバキア人もすぐに豊かになる、という夢を見ている。神学生たちもその嵐にのみ込まれている」




















無料会員登録はこちら
ログインはこちら