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歴史の転換点を意味する時間概念「カイロス」。日本の言語空間においても、ウクライナ戦争はカイロスになった

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筆者がこの連載で、ソ連崩壊の引き金となった1991年8月の国家非常事態委員会によるクーデター、さらにこの事件の1年9カ月前に起きたチェコスロバキアのビロード革命について2年以上にわたって扱っているのには、戦略的な意図がある。

2つの時間を区別して考える

2025年1月にドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に返り咲いてから起きている世界的規模での混乱を理解するうえで、過去の社会的大混乱について考察することが有益と筆者は考えている。

佐藤優氏によるコラム。ビジネスパーソンに真の教養をお届け。【土曜日更新】

ユダヤ・キリスト教の伝統では、2つの時間を区別して考える。この時間理解が、近代的歴史観の基礎になっている。

第1の時間は、ギリシャ語でクロノス(chronos)と表現される、流れ過ぎていく時間だ。英語で時系列表や年表をクロノロジー(chronology)と呼ぶのは、この時間概念に基づいている。英語のタイム(time)が、クロノスに相当する時間と考えてよい。

第2の時間は、ギリシャ語でカイロス(kairos)と表現される時間だ。ある出来事の前と後とで歴史的意味が異なってくるものだ。英語ではタイミング(timing)に相当する時間である。

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