「フォーマット取引」はテレビを潤すか? 世界に広がる、TBS「SASUKE」の秘密

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ただ、制作ノウハウの蓄積不足や経済環境の違いから自主製作番組を流せるだけの予算が組めない(時間あたりの広告費が安い)国では、視聴率の悪い時間帯に自主製作番組を流す余裕はなく、すでに製作されている番組を仕入れて放送するか、自主製作番組の再放送を流すほかない(とはいえ、充分に過去のライブラリがなければ他から買うしかない。

日本でも、かつては米国のシチュエーション・コメディ(”奥様は魔女“などに代表される舞台設定を固定したコメディドラマ)が数多く放送されていたのを憶えているはずだ。最近であれば、韓国ドラマが流れていることが多いだろうが、これもその放送枠の不動産的価値から番組調達にかかるコストが決まり、そのコスト内で視聴率の取れるコンテンツは何か?を考えて、トレードショウで仕入れられた番組ということになる。

「MIPCOM2014」の会場内の様子

テレビ放送に枠があるならば、そこで何か番組を放送しなければ事業機会損失となる。これはどこの国でも同じで、その場所(放送チャンネルと時間枠)の価値に応じて流す番組が決められていくわけだ。かつて1990年代、日本のアニメが多く売れたのは、低予算枠に対して安価で子どもを惹きつけるアニメ作品が存在したためだ。ところが、2000年代に入るとアニメ輸出は減少していく。アニメが子ども向けのコンテンツから、徐々に大人向けに変化していったためだ。もちろん、最近のアニメの中にもNARUTOのような成功例もあるが、子ども向けに解りやすくカルチャーギャップを感じずに多くの子たちが楽しめる作品は減ってしまった。

加えて日本アニメ、ハリウッドアニメの模倣コンテンツの質が確実に上がってきている。アニメーターの仕事を海外に発注した結果、作画や制作のノウハウを会得した中国、韓国のスタジオが独自制作を始めたからだ。こうしたスタジオはそれぞれの国内ではなく、海外販売を意識して作られているため「現時点ではさほど売れていないものの、数年もすれば存在感を出すだろう」と、日本人のバイヤーや各局セールスも口を揃える。

その背景には、現在の日本アニメが高価なブルーレイディスクを購入できる30代以上のマニアを対象にしたものになりがちだから……という側面があるようだが、ここではアニメ輸出が難しい環境にあるということだけ知っておいていただきたい。

ではドラマはどうなのか?というと、こちらも大きな期待はできない。実写ドラマの場合、見た目(人種によるビジュアルの違い)の違いを超えて海外のドラマを受け入れる素養がある国は少なく、アジアで制作されたドラマは、そのほとんどがアジアにしか売れない。これは日本のドラマだけでなく、韓国ドラマも同じだ。

必然的にアジア諸国への販売に絞られるが、日本のテレビ広告枠は米国に続き2番目に高い。アジア諸国にたくさんドラマを売ったとしても、そのすべてを合計したとして、あまり大きな売り上げにならない。

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