人手不足などを理由に、事業主から休むこと自体を拒否されてしまう場合もあるようです。事業主の意に反して休んだ場合、法的にはどうなってしまうのでしょうか?
この点、労働基準法第5条では、強制労働を禁じており、下記のように定められています。
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
本条違反に対しては、「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」という、労働基準法上、最も重い罰則が定められています。
「君が休むことによって、どれだけ迷惑がかかると思っているんだ。とにかく出勤しなければ私は許さないぞ!」などと恫喝して強制出勤させることは、パワハラにとどまらず、刑事罰の対象ともなりうる行為なのです。
法的には解雇のリスクもあるが…
実際に労働基準監督署に通報するまではしないにしても、この法的事実を知っていれば、事業主が休まないよう圧力をかけてきている場合であっても、自身が受ける心理的プレッシャーは大きく和らぐのではないでしょうか。
しかし、休むことに対して従業員側に不利益がまったくないわけではないことに注意が必要です。
有給休暇の残日数がなかったり、前述したコロナ特別休暇を利用できない場合は、「欠勤」という扱いになり、休んだ日に対する賃金は支払われません。
また、多くの会社の就業規則では、欠勤が一定日数に及んだ場合や、使用者からの出勤命令に応じない場合を解雇事由に定めていますので、法的には「強制労働は禁じられているので出勤しないことは可能だが、そのことにより解雇されるリスクはある」という状態になります。
ただし、この点については、労働契約法第16条で以下のように定められています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
この条文により、形式的に就業規則上の解雇要件に該当したとしても、「合理的な理由」がなかったり「社会通念上相当」ではない解雇は無効になるとして、労働者は守られているのです。
コロナ禍で学校が休業になったため、子どもの世話をするためにやむなく欠勤した労働者を解雇するというのは、「合理的理由」がなく「社会通念上も相当でない」ことは明白です。
まして、国は、「小学校休業等助成金」を設け、休むことを奨励しているのですから、万が一、解雇の有効性をめぐって裁判になったとしても、解雇無効になる可能性が極めて高いと思われます。
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