豊岡市は「命への共感に満ちたまち」を目指す コウノトリのまちが地味に進めたこと(上)

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 「政治」というと、「難しそう」「私には関係ない」「偉い人がなんとかしれくれる」と敬遠してしまいがち。しかし、今まで目を向けてこなかっただけで、当 たり前だけれど、政治と私たちの生活はつながっている。経営ストラテジストで作家、そして1児の母でもある坂之上洋子さんが、「あまり知られていないけれ ど、実はいい政策」をフィーチャーし、ビジネス目線、ママ目線、NPO目線で、素朴な疑問を明らかにしていく。
第4回目は、豊岡市の中貝宗治市長。豊岡市は、兵庫県の北部、日本海に面した市で、城崎温泉、コウノトリなどで知られるまちである。

坂之上:10年前に台風の被害に遭われて、とても大変だったと伺いました。

中貝:2004年の台風23号の時ですね。市の中央部を流れる円山(まるやま)川が氾濫して、町中が水びたしになってしまいました。

坂之上:その時に工事のことで、違法なことをされたとか?

中貝:はい。復旧に向けて工事を進めたのですが、補助金ルール上の期限である年度末までに工事が終わりませんでした。……でも、工事は完成する見込みだと国に報告して、工事を続けたんです。

もう被害は出したくない、でも工事が終わらない

坂之上:それは不正受給ですよね。

中貝:はい。担当の職員はもう、悩みに悩んでいたんです。3月末までに工事を終わらせないといけないのに、それはもう膨大な工事の量で。しかもその年は大雪で、土がビシャビシャで工事ができないと。

泥の海に沈んだ豊岡市内の住宅街

坂之上:それを相談された時、どうされたんですか。

中貝:4月に入ってから報告を受けて、激怒しました。「工事が終わっていないなら、補助金は返せ! 工事は止めろ!」と。

坂之上:はい。

中貝:ところが職員が、「やっと雪がとけて、今残っているのは、全部、川の工事なんです。だけどこれから残りの工事の補助金を返して、あらためて予算を組み直して、工事をしてくれる業者を募っていると、すぐ6月になってしまいます。そしたらまた11月まで工事ができません。復旧工事が終わっていなくて無防備なところにもう一度台風が来て、また市民に被害がでたら、私たちはどうしたらいいんですか」って。

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