地方都市は「ほどほどパラダイス」になった! 地方の若者におけるイオンモールの存在感

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 郊外のショッピングモールは、今や下流ファミリーのたまり場ではない。あらゆる層のニーズを満たし、若者からお年寄りまで続々と押し寄せるパワースポットと化した。中でも人気なのが、「イオンモール」と「ららぽーと」だ。商業施設の巨大化・進化につれて、そこに集う「イオニスト」「ららぽーたー」が増殖している。
 人々は何に魅せられてショッピングモールに行くのか? 人気ショッピングモールの背景を5日連続で分析する。1日目は、社会学者の阿部真大さんに、地方の若者とイオンモールの関係を伺う。

 

イオンモール倉敷

 

若者の半数「余暇をイオンモールで過ごす」

――阿部真大さんは『地方にこもる若者たち』の中で、地方の若者とイオンモールの関係について論じています。そこに注目したきっかけは?

阿部真大さん
社会学者、甲南大学准教授
1976年、岐阜県生まれ。東京大学卒。2014年から、西オーストラリア大学客員研究員。専門は労働社会学、家族社会学、社会調査論。ポスト日本型福祉社会におけるセーフティネットのあり方について社会学的な見地から考えている。主な著書に、『搾取される若者たち─―バイク便ライダーは見た!』(集英社)、『働きすぎる若者たち ―「自分探し」の果てに』(NHK出版)、『居場所の社会学─―生きづらさを超えて』(日本経済新聞出版社)、『「破格」の人─―半歩出る働き方』(KADOKAWA)、『地方にこもる若者たち──都会と田舎の間に出現した新しい社会』(朝日新書)などがある。

岡山の大学にいる先輩と一緒に、若者の価値観に関する調査を始めたのですが、その際に地方の若者たちの中でイオンモールの占める存在感の大きさに気づいたのです。

若者たちに「余暇を過ごす場所」を質問したところ、半数が「イオンモール」と答えた。岡山で調査したので、これはイオンモール倉敷を指します。イオンモール以外のショッピングセンターや複合レジャー施設を含めると、実に4人に3人が「イオン的な場所」で過ごしていました。

――レジャー施設が少ないから、イオンモールしか行くところがない、という意味でしょうか。

いや、東京から見ると、イオンモールだけドーンと突出しているように見えますが、イオンモールは中心にあるもので、言ってみれば天守閣。その周りに城下町が広がっているようなイメージなのです。

彼らの話を聞いてみると、たとえば、家から1時間、2時間かけて車でイオンモールに行って、そこに行くまでの間、ドライブを楽しみ、イオンモールで買い物をして、またどこかのファミレスに行ってご飯を食べて、途中の展望台のようなところで休んで、ラウンドワンに行って、ゲオに寄って……と、商業施設がいくつか組み合わさって、ひとつの大きな商業圏を形成している。

1990年代後半から2000年代に、地方に続々と商業施設ができました。かなり田舎のほうにもショッピングセンター的なところはありますが、それは小さくてあまり輝いてない店だったりする。日常生活はそういう店で済ませて、週末にイオンモールに行く。彼らの消費生活の中で、いろいろな商業施設のランキングがあり、その頂点に位置するのが、イオンモールなわけです。

――頂点。確かにイオンモールに行けば、買い物も食事もできて、映画も見られて、一日中、楽しめます。

まあ、ディズニーランドみたいなものですね。僕は岐阜の出身で、1995年に大学進学のために東京に出てきて、地方がすごく変わったことに気づきませんでした。今は岐阜にも巨大なショッピングモールがいくつかありますが、その頃はまだなかった。僕が東京にいる数年の間に地方が劇的に変わり、東京だけ取り残されていたのです。

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