坂之上:いろいろ重なってしまったのですね。
中貝:台風23号のあのつらさを経験したばかりで、僕の中には苦しい気持ちが強く残っていました。あの時、僕が円山川の堤防を守るために支流の排水ポンプを停止するよう命じて、町中水びたしになったわけですから。堤防が決壊して、お一人の方も亡くなっています。
坂之上:はい。
中貝:二度とあんなことを起こしてはいけない。工事ができないことによって、無防備なままの町に再び被害が出たら、どんな言い訳もできない。それだけは防がなければいけない。そんな気持ちでしたね。
坂之上:素人質問で恥ずかしいのですが、国の予算ってもっと柔軟にできないものなんですか?
中貝:国もね、被災した翌年の2月に、急いでたくさんの予算をつけてくれたんです。でも、それが逆にあだになった、というか。
たった2カ月後に4月になって、年度をまたぐことになった。年度をまたぐ事業の繰り越しは原則1回しか認められない。2カ月しかたってなくても、1回は1回。もし年度初めの4月に予算がついていたら、1回の繰り越しでその翌々年の3月末まで、実2年かけられたんですけど。
坂之上:そういうルールなんですね。
中貝:だけど、国も別に嫌がらせでそうしたわけじゃなくて、「あそこは大変だから、とにかく早く予算をつけよう」って、支援の気持ちですぐに手続きしてくれたわけなんです。
坂之上:「補助金の不正受給」って記事が出てしまった時、どう行動されたんですか?
中貝:職員には「絶対にうそをつくな、言い訳するな」と言いました。それから、記者会見をして、ぜんぶ事情を説明しました。ルール違反はルール違反ですから、いっさい言い訳めいた言い方をしませんでした。
坂之上:動機は正しいかもしれないけれども、違法なわけで、マスコミから非難され、叩かれたんですね。
中貝:それは当然のことです。だからどんなペナルティーも受けようと。僕の給料も1カ月全額カットしました。
坂之上:政治家としては汚点がついたわけで、後悔されてますか?
中貝:いえ。まったく後悔していません。
散髪に行って言われた、「お代をいただけません」
坂之上:その後の、市民のみなさんの反応は?
中貝:給与のカットを発表して何日か経ったころ、散髪に行ったんです。髪を切り終わった後、財布を出して支払いをしようとすると、そこのご主人が首を横に振るわけです。
「え?」って僕がいうと、「あなたからは、お代はいただけません」と。その時は、泣きそうになりました。
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