障がい者が自立すれば、みんなが元気になれる

国にNO!を突き付けた岡山県総社市長の戦い(上)

 「政治」というと、「難しそう」「私には関係ない」「偉い人がなんとかしれくれる」と敬遠してしまいがち。しかし、今まで目を向けてこなかっただけで、当たり前だけれど、政治と私たちの生活はつながっている。経営ストラテジストで作家、そして1児の母でもある坂之上洋子さんが、「あまり知られていないけれど、実はいい政策」をフューチャーし、ビジネス目線、ママ目線、NPO目線で、素朴な疑問を明らかにしていく。
 第1回目は、岡山県総社市長を務める、片岡聡一さん。

この子を総社市が迎え入れてくれるなら、つらい日々も泳ぎきれる

坂之上:市長は、障がい者をできるだけたくさん雇用しようと頑張っていらっしゃいますよね。まず、そこから教えてください。

片岡:はい。でもね、障がい者雇用を市の「売り」にしちゃいけないって、よく思うんですよ。たとえばですよ、ここに3歳の女の子がふたりいて、この子は重度の障がいで、この子は軽い障がいですと。あなたは、どっちかを引き取らなければいけません、と。どっち引き取ります?

坂之上:厳しい質問ですね……。ごめんなさい。自分は、軽い障がいの子を引き取るかもしれません。

片岡:でしょう。人間そうじゃないですか。障がいがある人に、毎日毎日、優しい気持ちばかりじゃいられない。そんなことすら認めながら、彼らが「生まれ育って、働いて、老いていく」ことができる仕組みをまず作って、これから先、誰が市長をやっても大丈夫なようにセットできたら、多くの人が救われると思っているんです。

僕の夢はね、障がい者の「人生の3段階」を、総社市で完成させることなんですよ。ファーストステージは「生まれて育ち、教育する」こと。セカンドステージは「就労、社会に出る」こと。そしてラストステージは、「老い、死んでいく」場を用意すること。

だからまず、障がい者を1000人雇用することを目標にした「障がい者千人雇用」っていうのを始めたんです。

坂之上:それはどういうことですか。

片岡:3年前、総社市には、知的、精神、身体に障がいのある方をすべて足すと、3152人の障がい者がいたんです。そのとき、「18歳から60歳の方のうち、働いてる人はいったい何人だ?」って職員に聞いたら、「180人だ」と。その頃、総社市にいる障がい者のうち、18~60歳の人数は1200人ぐらいでした。じゃあ、働いていない残りの1020人はどこにいるのか? 実は、障がいを隠して、家でひっそりと暮らしていたんです。その残りの1000人を社会に呼び込んで、働いてもらおう、参加してもらおうと思って掲げたのが、「1000人を雇用する」ということだったんです。

だけど「1000人雇用するんだ!」と言ったら、職員がよってたかって、「殿、ご乱心」みたいに言う。

坂之上:殿、ご乱心(笑)。

片岡:そんなのできっこないって。できっこない理由を、ワーッと言われました。でも、それから3年で、721人まで就労できたわけですよ。

坂之上:す、すごい。

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