(第51回)【2011年度新卒採用戦線総括】研究室訪問、リクルーター制に多くの企業は断念

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 大きく異なるのは「自社の採用ホームページ」だ。小企業は28%と低く、「自社の会社ホームページ」よりも低い。もしかすると予算がなくて、採用ホームページのコンテンツが単なる募集要項だけの可能性もある。そんな熱意のない採用ホームページでは効果が小さいから、結果的に重視度が低いのではないかと思われる。

 逆に大企業は「自社の採用ホームページ」を最も重視している(83%)。エントリーを採用ホームページに限定している大企業もあるくらいだから当然だろう。就職人気企業ランキングに名前が出る企業のホームページは優れている(優れているからランキングが上がる)。つまり大企業と小企業の採活格差は、採用ホームページで顕著なのだ。

●貧相なホームページを見て逃げ出す学生

 実際に小企業と大企業の採用ホームページの質の違いは歴然としている。大企業はデザイン性が高く、コンテンツも豊富だが、小企業の採用ホームページは全体的にさみしい。予算がない、人が少ない、現場の協力が得られない、経営者の理解がない、と理由はいくつも推測できるが、きちんとした採用ホームページは現在の採活では基本装備だと思う。また。他のメディアやツールは、毎年コストが発生するが、採用ホームページはわずかな修正で流用でき、コストパフォーマンスが高いのだ。

 新卒採用を人材戦略に組み込んでいる企業は、規模が小さくても採用ホームページを重視すべきだ。学生が就職ナビで企業と出合っても、その企業の貧相な会社ホームページ、採用ホームページを見に来てそのまま逃げてしまっている可能性は高い。

●細ったままの教授とのパイプ

 20年前まで人事部にとって、研究室やゼミを含む大学とのパイプはとても重要だったが、今日ではほとんど無視されている。「キャリアセンターへの情報提供」は大企業、小企業ともに30%台だが、「ゼミや研究室の指導教授への情報提供」は10%前後と低い。
 パイプ作り、パイプの維持という伝統が失われたままということも原因だろうが、キャリアセンターとの関係は「組織対組織」というビジネスライクな対応で済むのに対し、教授とのコンタクトは「人間対人間」なので、連絡文の作成でも緊張するし、訪問すれば手土産を用意しなくてはならない。そして時間も取られる。そういう面倒くささもやらない理由なのかもしれない。

 しかし、訪問し教授と会って学生と話せば確実に効果はある。実際に毎年リクルーターによる研究室訪問を実践している半導体開発会社では、北海道大や筑波大などの理系学生を獲得して成果を上げている。「採れない」と嘆く前に訪問すべきだと思う。
 かなり多くの企業が大学での説明会を実施している。その説明会を利用して、事前にアポを取った教授を訪ねるだけのことでもいい。そんな小さな努力で優秀な学生が採用できることもある。

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