オミクロン株で知る「ギリシア語」知られざる話 何気なく使っているギリシア語由来の単語

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ω(omega)はギリシャ文字の中では有名な文字であるせいか、発音のバリエーションも多いです。アメリカでは第二音節にストレスを置くようですが、そのeは/eɪ/(エイ)、/e/(エ)、/iː/(イー)というように3通りの読み方があります。イギリスではoが/əʊ/(エウ)とイギリスふうになる以外は、基本的に同じでeの読み方が3通り。それに加えて、ストレスを第一音節に置いて/ˈəʊmɪɡə/(エウミガ)と発音する場合があるようです。

φ(phi)やχ(chi)、ψ(psi)の英語でのスペルを見ると、ギリシャ語が英語に影響しているのがわかります。不思議なつづりをする単語には、ギリシャ語が語源のものがあるんです。例えば、/f/という音をfではなくphでつづるもの、思いつきますか。physical(物質の、肉体の)やtelephone(電話)のphはたどっていくとギリシャ文字のφ(phi)なんですよ。

chを/k/と読むものはχ(chi)につながっている可能性が高いです。例えば、chorus(コーラス)やchemistry(化学)のchもχ(chi)から来たもの。psという不思議なつづりはψ(psi)に由来します。「ああ、あれね!」と思いつく方も多いでしょう。psychology(心理学)がその一例ですが、この単語にはpsだけでなく、chまで入ってますね!pseudo-(偽の)という接頭辞もψ(psi)から来ています。pseudo-intellectual(似非インテリ)やpseudo-Japanese(偽日本ふうの)などのように使います。

クリスマスをXmasと書くのはなぜ

ちなみに実はChristmas(クリスマス)もχ(chi)につながっているのは、皆さんご存じですか。Christ(キリスト)のことをギリシャ語ではΧριστός(Christós)と書くそうで、この頭文字χ(chi)でChristを表してXmasと表記するようになったらしいです。Χριστός(Christós)の初めの2文字χ(chi)とρ(rho)を組み合わせてChristを表す記号とすることもあるそうです。見てみたい方はChi-Rhoで検索してみてください。

このXmasという表記、意外に長い歴史があるようで、英語圏では19世紀後半ごろから広く使われるようになっていったそうです。ただ、現代ではあまり一般的ではない気がします。このようにChristと省略してつづるのはあまり好ましくないという意見もあるようですね。筆者はイギリスやアメリカで目にした記憶はほぼありません。カードや店頭などでも、きちんとChristmasと書くのが通常だと思います。日本ではよく目にするのが本当に不思議です。

そんなこともあり、筆者は以前Xmasというつづりは日本でしか使われないものだと思っていました。ところが、大学時代にイギリス人の教授がXtian(Christian)とかXtianity(Christianity)と板書しているのを見て、「ネイティブもXと略して使うのか!」と驚いた記憶があります。歴史的にはXopher(Christopher)やXina(Christina)、Xene(Christine)のようにつづる名前もあったのだとか。知らずに「ゾウファー」とか「ジーナ」とか読んでしまいそうですね。

σ(sigma)には小文字が2つありますが、通常はσを使用します。語末でのみςと表記するそうで、このςはファイナルシグマと呼ばれています。先ほどのΧριστός(Christós)を見てみると、真ん中のsはσですが、語末のsはςでつづられていますね。小文字のほうはあまりなじみがないかもしれませんが、大文字のΣはよく見かけるはず。エクセルにもΣボタンがありますが、見たことがありますか。数学で出てくるΣは、総和(summation)のsを表しているらしいですよ。

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