オミクロン株で知る「ギリシア語」知られざる話 何気なく使っているギリシア語由来の単語

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英語ではξ(xi)とπ(pi)のiを/aɪ/(アイ)と読みます。ξ(xi)の子音xには4通りの読み方があり、/s/(ス)という音で読んで「サイ」、または/ks/(クス)と読んで「クサイ」とする方法。それから、それらを無声音から有声音にして「ザイ」「グザイ」とする方法です。

Longman Pronunciation Dictionaryでは、アメリカ英語には/zaɪ/(ザイ)という発音のみがあげられていましたが、実際にはそのほかの読み方で発音する方はいると思います。皆さんも近くにネイティブがいたら、どのように発音するか聞いてみるとおもしろいでしょう。

いま話題のο(omicron)も発音が4通りあります。アメリカでは第一音節のomにストレスを置きます。発音は、/ɑːm/(アーム)と/oʊm/(オウム)のどちらでも構いません。イギリスではアメリカ英語のように第一音節にストレスを置くときには/ɒm/(オム)と発音します。第二音節のiにストレスと置くときには/aɪ/(アイ)と読みますので、/əʊˈmaɪkrɒn/(エウマイクロン)のようになります。日本語の「オミクロン」とだいぶ違いますので、聞き取れるように覚えておくといいでしょう。

このο(omicron)ですが、oとmicronに分けてみると語源がわかります。先ほどμ(mu)が「マイクロ」という単位を表すのに使用されると言いましたが、この「マイクロ」はギリシャ語で「小さい」という意味のμικρός(mikrós)に由来しています。日本語でも、「マイクロ」や「ミクロ」を「小さい」という意味で使いますね。つまり、ο(omicron)は「小さいo」という意味なんです。

なぜ「小さいo」と言うのかというと、その反対に「大きいo」があるから。それがギリシャアルファベット最後の文字ω(omega)なんです。こちらもoとmegaに分けてみると、どうでしょう、わかりましたか。mega(メガ)は日本語でも使いますよね。これは「大きい」という意味なので、ω(omega)は「大きいo」という意味なんです。

π(pi)はもうおなじみですが、数学では円周率を表します。英語にはperimeter(平面図形の外周)、period(周期)、peripheral(周辺の)のように、peri-という接頭辞がつく単語がいくつかありますが、このperi-はギリシャ語に由来してaround(周)という意味を表します。この頭文字π(pi)を使って円周率を表すことにしたみたいですよ。円周率と言えば、小学生のときに丸暗記した語呂合わせ、「産医師異国に向こう、産後厄なく、産婦御やしろに、虫さんざん闇に鳴く……」は、結局あまり役に立ちませんでした。

ギリシャ語源の単語を見つけよう

最後、σ(sigma)からω(omega)までは一気に見てしまいましょう。

φ(phi)とχ(chi)、ψ(psi)は、π(pi)と同じ法則です。すべて母音のiは/aɪ/(アイ)と読みます。τ(tau)は母音auの読み方にバリエーションがあり、/aʊ/(アウ)、/ɔː/(オー)、/ɑː/(アー)とどれで読んでもよいようです。υ(upsilon)はアメリカでは3通りで、初めの母音uにストレスをおいて、/uː/(ウー)、/juː/(ユー)、または/ʌ/(ア)と発音します。残りはε(epsilon)と同じ法則です。イギリスでは、ε(epsilon)同様に/saɪ/(サイ)にストレスを置くことが多いようです。

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