岸田政権の財政運営を占うポイントは3つある 閣議決定近づく2022年度予算案の焦点は何か

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「16カ月予算」の考え方は、安倍・菅政権で多用した「15カ月予算」とほぼ同じ予算編成方針とみられる。そもそも「15カ月」とは、当年度で年度末までに残された年明けの3カ月と翌年度の12カ月を指す。岸田政権の場合、2021年度補正予算が12月に成立すると、年度末までに4カ月残されることから16カ月と呼んでいるだけだろう。この期間を一体として予算編成をすることが、第2次安倍内閣以降恒例行事化してしまっている。

「15カ月予算」は、予算規模の膨張を引き起こしかねない政治手法だが、財政健全化への配慮も忘れていなかった。この予算編成方針では、時限的な予算はできるかぎり当年度補正予算で対応し、翌年度当初予算はできるかぎり恒久的な予算だけに絞り込むことにしたのである。こうして、当初予算に盛り込まれる恒久的な予算だけを見れば、歴年の「骨太方針」で閣議決定してきた「歳出の目安」という歳出改革の基本方針を守り抜き、予算の膨張を防いできた。

だから、2020年度も2021年度も、当初予算で一部に時限的な予算が含まれたものの、それがはっきりわかる形で線引きをして、恒久的な予算の規模が見えるようにした。

そこで問われるのが、2022年度予算案である。岸田政権でも、この方針を踏襲すれば、2022年度予算案は、時限的な予算が盛り込まれたとしても、恒久的な予算が区別される形で示されるとともに、その歳出額は、2021年度当初予算の101.6兆円から大幅に増えることはないと考えられる。

その線よりも上回る予算規模になるか否かが、2022年度予算案の1つの焦点である。これが、小幅な伸びにとどまれば、コロナ後の財政健全化を見据えた予算編成であったと評価できよう。他方、大幅に増えたならば、財政健全化を度外視する兆候と見てとれる。2022年度予算案が、時限的な予算を含めて過去最大規模になるかどうかは、実はあまり重要ではない。

社会保障関係費は医療関連に注目

次に、社会保障関係費、中でも医療に関する予算である。2022年度には2年に1度の診療報酬改定がある。診療報酬改定が確定して半年ほどで日本医師会の会長(任期2年)選挙があるのが恒例となっている今日、診療報酬の改定率は、医療界の動向を大きく左右しうるものとなっている。それなりのプラス改定を勝ち得れば、現職の会長は株を上げることになろう。

他方、予算の膨張を抑えたい財務省は、今回の診療報酬改定に臨むに際して、東洋経済オンラインの拙稿「『ワクチン後』に待ち受ける日本医療制度の課題 2022年度予算編成の焦点は診療報酬改定に」で詳述したように、「医療制度改革なくして診療報酬改定なし」と打ち出している。つまり、医療界が、医療制度改革にコミットしなければ、プラス改定はありえない、という姿勢である。

財務省が譲れない一線は、先述の「骨太方針2021」で定めた「歳出の目安」で、社会保障費については、「その実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる」ことである。この線の範囲内で、医療を含む社会保障費が収められるか否かが問われる。

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