岸田政権の財政運営を占うポイントは3つある 閣議決定近づく2022年度予算案の焦点は何か

✎ 1〜 ✎ 174 ✎ 175 ✎ 176 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

3つ目のポイントは、国債発行である。もちろん、新規発行の国債がいくらになるかが注目点だが、借り換えも合わせた国債の市中発行額も要注目である。

まず、一般会計の歳入として国債をどれだけ新発することになるか。それを別の形で表せば、公債依存度として示すことができる。公債依存度とは、一般会計における歳出総額に占める公債金収入(新発国債による収入)の割合である。これが、コロナ前では40%を割っていたが、2020年度決算では73.5%に達した。歳出の約4分の3を借金に依存する前代未聞の事態であった。もちろん、これは過去最高水準である。

2021年度当初予算では、これが40.9%まで下がった(ただし、補正予算で国債を増発したため、補正後予算ベースでは、46.0%)。

2022年度では、2021年度に好調で過去最高を更新する見込みの税収が、コロナ禍からの経済回復によりさらに増えることが予想される。そうなると歳出予算の財源はより多く税収で賄えるようになって、新発国債への依存は下げられる可能性がある。つまり、公債依存度が40%を割るところまで下げられるかもしれない。2022年度予算案では、公債依存度が40%を割るか否かも焦点の1つといえよう。40%を割れば、コロナ前の水準に近づき、財政健全化の道筋がより明確になるだろう。

コロナ禍で自転車操業になっていた国債発行

加えて、新発国債だけでなく借換債を含めた2022年度における国債発行計画も、予算案と併せて示される予定となっている。そこでの注目点は、国債発行がどれだけ自転車操業状態から抜け出せるか、である。

新型コロナ対策によって2020年度補正予算以降、わが国の国債発行は自転車操業状態に陥っている。つまり、あらかじめ償還期限を決めて発行する国債のうち、過半は2年以下の満期となってしまった。だから、2020年度に2年満期で発行した国債は、2022年度に一旦償還しなければならず、借り換えるとしても再び国債を発行しなければならなくなる。2021年度において発行した1年以下の満期の国債も同様である。

2022年度では、2020年度と2021年度のこうした国債発行のツケが、早くも襲ってくる。日銀が国債を大規模に購入する量的緩和政策があるから、国債市場が直ちに大混乱になることはないだろうが、借りた国債をすぐに返さなければならず、かといって現金償還できないからまた借り換えなければならず、その繰り返しが毎年のように襲うという自転車操業状態から、容易に抜け出せない。

金利がほぼゼロだから、今のうちに長期債を出せば、低金利の恩恵が長期間受けられて、財政出動しても心配ない、などととても強弁できない状況である。長期債を、政府が望むだけ出し放題に出せば、逆に長期金利が上昇しかねない。金利上昇を抑えるには、市中で無難に消化できる程度にしか出せない。だから、短期債を大量に出さざるをえず、このような事態になっている。

自転車操業状態を緩和するには、2022年度予算案でできるだけ国債増発を抑えることである。これにより、短期債への依存が抑えられる。

12月24日にも閣議決定される予定の2022年度予算政府案は、どのような姿を見せるだろうか。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事