「施設出身の女性」が大卒→正社員になれたワケ 25歳が伝える「応援してもらえる自分になって」

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ある日、体調が悪くなった。熱っぽくて勉強も仕事もやる気が起きない。子宮頸がんも心配だったので婦人科に行った。医師に生理がきているかを聞かれた。きてないことを言うと検査になって「妊娠しています」といわれた。

「え、マジかって泣いちゃってました。子どもの親は彼氏。泣きはしたけど、冷静でした。お医者さんにちょっと考えたいっていったけど、7週目だったのですぐの返答を求められた。彼氏を呼んで冷静に考えて産めないよねって話になって、堕胎しますっていいました。産むという選択はなかったし、想像もしなかった。学生だし、自分の計画内ではないし、せっかく授かった命だからって考えはなかったです」

彼氏は堕ろすという決断を聞いて、黙って頷いた。費用は彼氏の母親が負担してくれた。同意書を書いてすぐに手術をした。

学費が払えなくなり、中退を考えていたという菅野さん(編集部撮影)

「うまく歩けないって後遺症が残って、足がひきつっちゃって歩けなくなった。しばらく学校も行けないし、バイト先にも行けなくなって、まったく稼ぐことができなくなっちゃったんです。2カ月間くらいニートしている間にお金は底を尽きちゃって、一緒に住んでいる彼氏もお金がない。もう無理だから、大学は辞めるしかないかって思ってました。そんなときに児童相談所の担当だった人から電話があって、いまの状況を聞かれたんです」

担当の職員に昼間は会社、夜は飲食店のダブルワークしても生活が厳しいことを言った。堕胎手術の後遺症で2カ月間くらい働けなくなって、もう学費が払えないので中退を考えていることも伝えた。

「連絡がきたときは、あと一歩で中退を決めるってところでした。いまどうなの?って聞かれたとき、全部話した。そこで児童養護施設の子どもが進学するときに、経済的な負担を軽減する新しい制度ができたことを聞いたんです。もうダメだってときだったので本当ですかって申請したら、本当に年間120万円くらいのお金が給付された。大学3年、4年と支援してもらって卒業できたんです。本当にギリギリのタイミングで、いま思えば、そのお金がなかったら中退して地元に戻っていました」

悩みが軽減し、すべてが好転した

2016年1月から実地された「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業」である。生活支援費と家賃支援費をあわせて月10万円程度の無利子貸付制度で、大学卒業後1年以内に就職して5年間業務に従事した場合に返済免除になる制度だった。

「そのお金があったことで昼間のアルバイトだけで学費を払って、生活することができました。中退しなくてもよくなって、時間の余裕もできたので就職活動もできた。本当に天からの恵みというか、悩みも軽減したし、すべてが好転しました。いまは返済免除を目指して、毎年会社の書類を書いてもらって提出しています」

大学3年からはインターンを始めて、必要な単位のほとんどを3年で取得した。一方、共依存的な関係だった彼氏は大学中退。働くこともしないで舞さんをもっと頼るようになり、2人の関係に溝ができるようになった。大学4年のときには関係を解消し、彼氏は舞さんの家を出ていった。

次ページ現在の年収は420万円
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