「施設出身の女性」が大卒→正社員になれたワケ 25歳が伝える「応援してもらえる自分になって」

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新卒入社したベンチャー企業は順調に業績を伸ばし、今年の舞さんの年俸は420万円だ。いまは都内2DKのマンションで、社会人になってから知り合った1つ年上の彼氏と同棲中で、家賃と生活費を折半して暮らしている。世帯年収は800万円を超えている。

「児童養護施設のときから、ずっと追い求めていたのは普通になること。みんなと同じ普通になりたかった。それは実現しました。普通の幸せを手に入れたので、次の目標をこれから考えていこうと思います」

ギリギリの状態だった舞さんがしたことは、苦しいながらも、自分で選んだ大学と就職活動をやり切って、いまも真面目に働いていることだった。新しいパートナーとは共依存のような関係になることなく、対等に付き合って相手の仕事や私生活も尊重している。このまま学生時代のように大きく困ることはなく、ずっと安定した生活が送れそうな予感はしている。

「私の時代は児童養護施設の出身者が進学するのは、本当に大変でした。何度も諦めそうになったし、最後は制度に助けられたけど、正直キレイな感じではなかった。児童相談所と施設の職員さんとは、いまでも連絡をとっているけど、大学のときにお金をつくるためになにをしたとか、裏でなにがあったとか、現実はなにも伝えてないです。言えません」

大学進学を決断し、高校時代からアルバイト漬けになり、進学してからはつねにお金に追われた。あらゆることをしても、お金は足りなかった。最終的に児童養護施設の子どもたちのための新制度「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業」に救われる結果となった。誰も頼る者がいない児童養護施設出身者が、支援なく、東京で学生生活を送るのは無理だったのだ。

「私は高校1年生のときから7年間、ギリギリの状態になるまで頑張ったつもり。なので、同じ境遇の子たちに頑張れみたいなことは言いたくないです。精神論ではなにも解決しない。その子たちを困らせてしまう状況をつくってしまうのがダメなので、まわりにいる大人たちが使うことができるあらゆる制度を教えてあげて、しっかりサポートしてあげてほしい」

「応援してもらえる自分になる」

児童養護施設の子どもたちは18歳になると退所しなければならない。児童養護施設出身者の大学進学率は12.4%と低く(2015年度、厚生労働省「社会的養護の現状について」より)、進学しないで働いて自立するのが普通である。舞さんによると「男性は住み込みの工場、女性は水商売に従事するのが一般的」で、それが嫌だった舞さんは高校1年生の段階で進学を決断している。

「いまだから言えるのは、まわりの大人たちに信頼してもらうことは必要。応援してもらえる自分になるってことです。進学したい、やりたい、やりたいって言葉だけでいっても、成績が悪いとか、学校にいかないとか、それでは応援してもらえない。そこはちゃんとしたほうがいいのは、進学したい子には全員当てはまることだと思う。お金で困っているんだったら、まずこの子は進学しないともったいないって客観的に思ってもらえる自分にならないといけないと思う」

児童養護施設の子どもたちが進学するための支援制度は続々と生まれている。舞さんが利用した無利子の貸付制度だけでなく、2020年から「高等教育の修学支援新制度」が始まっている。給付奨学金や納入金の減免、毎月数万円の返済不要の給付奨学金の給付や授業料等減免がされる手厚い内容になっている。

舞さんは「私たちが大学進学で苦労した最後の世代になるのはうれしいことです」と言っていた。

【2021年12月24日18時15分追記】初出時、奨学金の受給状況と高等教育の修学支援新制度に不正確な記述があったため修正しました。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。(外部配信先では問い合わせフォームに入れない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でご確認ください)
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