「あのときは確かに病んでいて、お金になることに対して、手段は選んでいませんでした。いろんな仕事をしたことを否定するつもりはないけど、あのときはお金のことと、人に依存してしまうことに悩んでいました」
児童養護施設で暮らす子どもは、高校卒業する18歳で退所して自立をしなければならない。施設で一緒に暮らしていたほどんどの者が就職を選ぶなかで、舞さんは東京の中堅大学に進学し、東京でひとり暮らしを始めている。
受験費用と初年度納入金、引っ越し費用は高校時代のアルバイトで貯金したお金を使った。東京で生活するためには毎月7万円の家賃、年間70万円程度の授業料、そのほかに生きていくための生活費が必要である。上京した2015年当時、児童養護施設出身の児童に対する給付奨学金や支援制度はなかった。毎月10万円貸与奨学金を受け取りながら、月15万円程度を自分で稼ぐという計画だった。
「ひとりでやっていかなきゃならないことは、わかっていてもキツかった。自分がお金を稼がないと、すぐに家も学校も失ってしまう。そのプレッシャーはストレスでした。大学に行けば、ほかの人たちは悠々としている。どうしても自分だけ……って思っちゃいます。お金の悩みはおもに年間70万円くらいの学費と、7万円の毎月の家賃です。すごく大きな金額でした」
昼間は会社でアルバイトをした。月の収入は8万円~10万円くらい。それだけでは足りないので飲食店や、手段を選ばずにさまざまな仕事に手を出した。お金に追われる生活はすぐに限界がきて、精神的に不安定になった。
「施設では4人部屋で集団生活をしているので、ずっと近くに人がいる生活でした。みんな一人部屋がいいとかいうけど、いざ一人になったとき、すごく寂しくなる。今までみたいに社会保障がバックについているわけではないので、体調壊せば終わり。同年代の友達は新生活が楽しそうだったけど、私は誰も知り合いがいなかった。地元はすぐに帰れる距離じゃないし、そこで病んじゃいました」
上京前にお金をどうするかという計画は立てたが、自分の精神状態までは予測がつかなかった。
親に虐待されていた彼氏と共依存に
「早く自立したいと思っていたのに、実際にしてみたらすごく孤独で苦しいんだなって。そこから友だちをめっちゃ家に呼ぶようになって、家に住まわせたとか。一時的には1Kに3人とか。誰か家にいてほしくて、そんな感じでした」
同じサークルの男子も舞さんの部屋に出入りするようになり、ある同級生と気づいたら一緒に暮らすようになっていた。以前の取材のときにLINEをつなぎっぱなしにしていた男子学生である。
「共依存みたいになりました。彼氏は親に虐待されていて親から逃げていた。同じような境遇だったんです。自分のわがままを全部聞いてくれて、来てって言ったらすぐに来てくれるし。向こうも誰かに依存したいってキモチがあって、そんな感じに。それで取材を受けて数カ月後に、私、妊娠しちゃったんです」
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