出戻り転職を経て、エンジニアという仕事に対するモチベーションをふたたび獲得した和宏さんだったが、しかし、B社に一度入ったことも、「とても大きかった」と振り返る。
「B社には、経費で勉強用の本を好きなだけ購入できる文化があったんです。もちろん以前から自分なりに勉強してはいたけど、勉強するほど『自分は知らないことが多すぎる……』と落ち込んで、目を背けることも多かった。もともと完璧主義な性格だから、『エンジニアを名乗るなら、完璧なエンジニアじゃないといけない』という気持ちがあって、完璧じゃない自分を直視するのが怖かったんです。
でも、本の購入を推奨されたことで、『あ、みんなも同じように悩んで、勉強し続けてるんだ』と気付いて、自分を縛っていた思い込みをなくすことができました。そう考えると、無駄な転職ではなかったなと思います。数カ月前までは、この仕事ずっとやっていけるのかな、自分には向いてないのではないか……と思っていたけど、今は毎朝勉強していますからね。
短期間で離れて申し訳ないことをしたけど、B社の人たちには、よい気づきをもらえました」
新卒での就職活動を恋愛に例えることがある。「縁やタイミング」「波長が合うか」などが挙がりがちだが、もし新卒就活が恋愛なら、「出戻り転職」は「復縁」。一度退社したことで良さを知った彼のケースは、まさに復縁と言えるだろう。一度離れてみることで、ものの見方が変わるのは、恋愛も仕事も同じなのだ。
まだまだ、「一度会社を辞めたら裏切り者扱い」的な会社もあると聞くが、人材難の今、出戻り社員は大きな戦力になる可能性を秘めている。人材の流動化という意味でも、今後ますます重要になってくるのは間違いないし、実際、人事として活動するなかで、そうやって採用をしている企業も増えている印象がある。
和宏さんのように、関係を終わらせない、関係を維持する退職ができると、今後の長い社会人生でいつかその出会いが味方になってくれるときがくるのではないだろうか。そして会社のほうも、転職していった社員に対し、「復縁したい」と思わせられるような別れ方をしておくのは、意味のあることだろう。
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