半導体「封止・検査」最大手、中国の4工場を売却 台湾「ASE」、1652億円で中国の投資ファンドに

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ASEは中国本土の4工場を売却し、本拠地の台湾により多くの経営資源を投入する。写真は売却対象の1つである上海工場(ASEのウェブサイトより)

台湾の半導体関連企業の日月光投資控股(ASE)は12月1日、中国本土の4カ所に保有する工場を中国の投資ファンドの智路資本(ワイズロード・キャピタル)に総額14億6000万ドル(約1652億円)で売却すると発表した。ASEは半導体業界で「後工程」と呼ばれる、電子回路を焼き付けたチップをパッケージに封止して検査を行う分野の世界最大手だ。

売却する4工場は上海市、江蘇省蘇州市、江蘇省昆山市、山東省威海市にあり、民生用や産業用のアナログ半導体、パワー半導体、高周波半導体などの封止・検査を手がけている。ASEの説明によれば、今回の売却は本拠地の台湾により多くの経営資源を投入し、高度な技術開発と生産能力増強に取り組むのが目的だという。

4工場を買い取る智路資本は、物件の引き渡し時に10億8000万ドル(約1222億円)を支払い、その6カ月後に残金の3億8000万ドル(約430億円)を支払う契約になっている。過去の投資額や売却経費を差し引くと、ASEは6億3000万ドル(約713億円)の純益を手にする見通しだ。

台湾当局は最先端技術の移転を禁止

ASEは1984年の創業で、台湾南部の高雄市に本社を置く。調査会社の集邦諮詢のレポートによれば、半導体の封止・検査分野におけるASEの市場シェアは、2021年7~9月期の売上高ベースで世界の24.2%を占める。

しかし台湾当局のハイテク投資規制により、ASEが中国本土に建設した工場には最先端技術の移転が禁じられている。台湾の半導体アナリストによれば、売却する4工場の売上高および利益はASE全社のわずか3%にすぎず、事業への影響は小さいという。

本記事は「財新」の提供記事です

一方、買い手である智路資本は半導体産業に特化した投資ファンドであり、封止・検査分野への投資は今回が初めてではない。2020年に同分野で世界3位のシンガポールのUTACホールディングスを買収。同じ年にシンガポールの封止設備メーカーであるASMパシフィック・テクノロジーと合弁で封止材料メーカーのアドバンスト・アセンブリー・マテリアルズ・インターナショナル(AAMI)を設立している。

(財新記者:張而弛)
※原文の配信は12月2日

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