中国のクラウドコンピューティング市場に「大型新人」が登場した。ショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」の運営企業として知られるアプリ開発大手の字節跳動科技(バイトダンス)だ。
同社の事業部門の1つで法人向けサービスを手がける「火山引擎(ボルケーノ・エンジン)」は12月2日、上海で開催したイベントでパブリック・クラウド・サービスへの参入を公式に宣言。IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)や動画・コンテンツの配信プラットフォーム・サービス、AI(人工知能)サービスなど、5分野の合計78種類のサービス・メニューを発表した。
「われわれの目標は、クラウドコンピューティング市場のメジャー・プレーヤーの1社になることだ。潜在力のある顧客との深い協力を通じて、今後2~3年のうちにモデルケースを作り上げたい」。火山引擎のトップを務める譚待氏は、財新記者の取材にそう意気込みを語った。
譚氏が社外の調査会社のレポートをもとに語ったところによれば、(クラウド・サービスを利用している)中国企業の92%は複数のクラウド・サービス・プロバイダーと契約しており、契約先数の平均値は2.6社だという。
「中国市場全体では、クラウドの普及率はまだ低い。すでにサービスを利用しているユーザーも、契約先を1社にまとめられているケースは少なく、後発組にも十分チャンスがある」(譚氏)
「一朝一夕には追いつけない」
バイトダンスの参入により、中国のクラウドコンピューティング市場で競争が激化するのは間違いない。譚氏によれば、火山引擎のクラウド・サービスのモットーは「究極の価格性能比を追求する」ことだ。しかし同時に、譚氏は「価格競争には走らない」と強調した。
だが、バイトダンスの参入は遅きに失した感が否めない。現在の中国市場では、電子商取引(EC)大手の阿里巴巴集団(アリババ)傘下の「阿里雲(アリババ・クラウド)」、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)傘下の「華為雲(ファーウェイ・クラウド)」、ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)傘下の「騰訊雲(テンセント・クラウド)」が「3強」としての地位を固め、市場全体の約6割のシェアを握っている。
後発のバイトダンスが3強に割って入り、大きな市場シェアを奪取するのは並大抵のことではない。財新記者の取材に応じたアリババ・クラウドのあるエンジニアは、次のようにコメントした。
「IaaSは初期投資額が大きく、競合他社との差別化が難しいため利益率を高めにくい。(長年かけて現在の地位を築いた)アリババや競合大手の蓄積は、バイトダンスが一朝一夕に追いつけるものではないだろう」
(財新記者:張而馳)
※原文の配信は12月3日
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